いい匂いのする夜
まずはお知らせから。
明日の「どなたでもデー」は予定通りの20:00〜24:00までの開催となります。
かなり予約が入っておりますので混雑するやもしれませんが、クーラー効かせてお待ちしております。どうぞ宜しくお願いします!
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暑い暑いと言っている間に、8月ももう終わりじゃないですか!!
こんな調子やとすぐに大晦日やわ、、(母親の口癖)とでも言いたくなるスピード感。
お店が暇だと呟いていた7月〜8月頭の頃と打って変わって今は大忙し。皆さん2年半振りの旅行も落ち着かれたのでしょうか。川に戻る鮭のように皆さん見事に帰って来られました。
いつまで続くか分からないけど、暇な頃を潜り抜けた忙しさは恵みの雨のように有り難みを感じています。
神様は折に触れてこういう試練をお与えになるけれど、今はこの喜びをただ味わい、調子に乗らないよう何度も反芻しております。
僕はただ、知らない人同士がいつの間にか作用し合って笑い転げてるのを見たいだけなんですよ。暇だから悲しいのはお金を底なしに稼ぎたいのではなく(必要な分あればいいよね)誰かの役に立ちたい、笑ってるところを見せて欲しい、その一点しかありません。
「3000万円あげるから即店閉めて」って言われても今なら胸を張って断れます。そのくらい賑わっているお店に立つのって楽しいんですよ。その喜びたるや、麻薬以上。
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昨日もNYから来たカップルが「クラブに行きたい」と言い出しました。日曜日の夜の23:30ですよ、どこも静かですから難しいかな、、と伝えると残念そうにしていたんだけど。そりゃ無理難題ですよ。
そうだ!
と、思いついた。
店のオーディオからものすごい爆音でハウスミュージックを流して、店の吊り棚に仕込んだミラーボールを出し、これまた仕込みのライトを七色にランダム点滅させてクラブ仕様にシフト。その間8秒、月や星もオマケじゃ。
(写真はイメージです)
「からくり全部載せ」はいつものネタなんだけど、音楽の力って凄い。ハウス音楽ならまるでクラブのようになるし、ディキシーランドを流せば場末のサーカスに見えたり、音楽を変えればそれなりにキチンとハマるのが不思議な所です。
ハウスに合わせて踊りだすお客さん方と、半泣きで「オーマイゴッ」を連呼する旅行者たち。、、、これこれ、これなのよ。
直近のアカデミー賞受賞作品「エヴリシング エブリウェア オールアットワンス」じゃないけれど、誰かを瞬間移動させてあげたり、少しだけでも夢を叶えてあげられるとしたら、、そんな素敵な事はないです。
古典落語にも似たものを感じますね。
桂吉朝さんなんかが柔らかな上方言葉で「所変わりまして此方は春爛漫の箕面。桜並木の下を芸者衆を伴い歩いておりますと、、、」
と師匠が肩を上下して歩くパントマイムをし、下座音楽が賑やかに鳴りだすと、そこには一面の桜並木が見える。花の匂いまでするんじゃないかと思うくらい。
あのテレポーテーションが僕の店で10パターン、いや、5パターンでもできたら。毎日どんなに楽しいだろう。
神様、お願いだから僕のライフワークを奪わないで!!
そんな訳で僕の存在意義も、趣味も、殆どの物欲も承認欲求も全てはお店を中心に回っています。
またDIYしよっと。桜並木は出せないかしら、、、。
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お店以外の物欲は本当にないんだけれど、食い意地とレトロ探訪には惜しげもなくお金を使います。
この2週間ほど忙しかったのと、海の家が終わったのに気をよくしまして少しました。
10日後くらい、少し先に届くように設定しておき、幸福の種を蒔いておきます。忘れた頃に届いて喜ぶ、ああ小市民。
まずは海産物を2種。サメの卵と卵黄から作った偽物のカラスミ、唐千寿(これが旨いのです!)を6本ほどまとめ買い。
このアイテムを教えてくれたのは周年スタッフのK氏なんだけれど、一本が660円なんです。味は本物とほとんど変わらない上に、食べる時に散財した罪悪感も感じない。
なので、疲れた時にスニッカーズのチョコバーよろしく齧り付きます。
もう一品は規格外の不揃いなホタテ貝柱。一キロ4,000円の激安なのですが、刺身もいいし小麦粉をたっぷり塗してバターソテーにしたり、少し干し貝柱にしたり。
この物価高の現在、4,000円で一体どのくらいの楽しみが得られるだろうか?
浅草〜中野坂上往復が520円、浅草のときわ食堂で刺身定食を食べたら1,480円。花やしきの入場料が1,200円、銭湯が値上げして今は520円。
もうあと300円しか残らないじゃん!!
ならば、僕は同じ金額でホタテの夢を見ます。私は貝になりたい。
そしてレトロ。
佳日の俵屋旅館の石鹸は相変わらず愛用しておりますが、時間が経つと少し欲が出てきました。
それというのはあの日、旅館にそっと備えてあった昼寝用のガーゼの掛け布団なのです。
僕の思い出は、宿で昼下がりに仮眠を取った時の石鹸の香りとガーゼ布団が一対になっていまして、今でも忘れられないんですよね。
(公式サイトより 手前のやつ)
ガーゼケットという名前だそうで、ガーゼを6枚重ねた夏冬兼用の掛け布団。まるで羽衣のような軽さで、遠い日にお母さんの胸で眠るような果てしないノスタルジーが僕を包んでくれました。
石鹸の香りは既に手に入れたけど、自宅で石鹸の香りと共に、更にあのガーゼ布団に包まれたら、。合わせ技だなんて、そうしたら僕は幸せすぎて死んでしまうかもしれない!
などと毎日考えてたんだけど、税送料込みで20,000円もする。まあ高いんですよ。ホタテが5キロ買えちゃ(しつこい)
Amazonで似たのが3,000円で売ってたりして、うーん、似たものないのかな。ここでケチってAmazonで買って、うっかり俵屋さんの夢でも見たらそれこそ後味悪いし。俵屋さんのは10年使えば一晩単価が5.47円。
よしっ、と、 思い切って買ってしまいました。こんなにどこかの宿泊施設に後々まで翻弄されるなんて自分でも驚きです。今までこんな事なかったもん。
今でも思うのですが、設備や備品がさりげなすぎて「普段使い出来るかも?」と思わせる。ちょっとの背伸びならね、という絶妙なラインなのです。
これがホテルリッツのシルクのガウンとかだと自宅じゃ浮いちゃって惨めな結果になるんだろうけどな。
いやはや、流石です。参りました。
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レトロと言えばもう一つ。
日曜日にですね、数人の友人と共通の友人だった方のお墓参りに行ってきました。若くして逝ってしまったあの日から一年と少しが経ちました。
ドイツの高級な、それも新車を出して運転くださった方を含むお二人とはもう17年近くの付き合いになりますが、恐ろしく知的で回転早くて、少し意地悪な所のあるスマートな会話が僕の理想的なキャラクターの方でして、片道4時間はゲラゲラ笑いながらのドライブとなりました。
お墓参りと楽しいドライブも最高だったのですが、それに加えて墓所に向かう途中の荻窪の辺りで、とんでもない建築に遭遇しました!!
ギャーー!!大好物だろ!!
調べますと登録文化財の旅館だそうで、、。お電話のみの予約なのを即段取りまして、週明け月曜に一泊してまいります。素泊まりで一泊7000円。
ひゃー。素敵だこと。正しい佇まい。
荻窪はよくよく散歩していたので30回以上は歩いてるけど、ここは偶然避けていたようです。
偽物カラスミと半端な貝柱をリュックに詰めて、俵屋の石鹸とガーゼ布団を更に背負ってこの宿に泊まったらどれだけ幸せなんだろう(笑)
またいずれ、昭和レトロ探訪にて書こうと思います。