同じ悩みを繰り返す(笑)






長い付き合いの友人から、こんな内容のメールを頂きました。


「最近お店に行けてなかったのですが、最近また通いだして思った事があります。ここに来るといつも、何かを始めようとする若い頃のワクワクした自分に戻れます。いつもありがとう」


といったような内容。



うーん、なんて有難い内容なんだろう。でもね、正直言うとですね、若さを思い出させるようなワクワクしたようなモノを提供出来ているか、と自分に問うと、全く自信がありません。



今の僕は正直言ってくたびれ果ててしまっています。過去の経験という貯金だけで何とかやってるような気さえします(歳を重ねたらそんなもんだと言われそうだけど)


昔のような「今夜も全力で楽しませてやったぜ」感が得られなくなっています。

かつての自分は、何の根拠も大した技術もなく何故か魔法のように「楽しい遊び」を思いついてはやってました。

僕の得意とする、世話焼きオバサン的な人と人をくっ付ける技とか、その場にあるモノを使って、その日のメンバーに一番ベストなチョイスでの遊びを事を思いつくような事、です。

例えば、曇った窓ガラスに指で絵を描いて貰ってそこに即興で音楽を付けたり、朗読したりみんなで合唱したり踊ったり。やるにあたって、何の躊躇も照れもなかった。


その場でディスコになったり、オペラ座や歌舞伎座、古いパリのシャンソニエみたいにもなった。

自分で言うのも何なんだけれど、まるで魔法使いのように色んなことをその場で思いついては、照れもなく実行してました。


そこには何の説得力も技術もないんだけど、ただ漠然と自信があったのです。

まあ、若さがそうさせた、といえばそれまでなんですけど、、。



そもそも飲み屋ってのは、初対面の人同士を並べて、酔わせつつ飽きさせない空気を作らないといけないという、世にも恐ろしい作業の連続です。

時には強権的に、強気に絡んだりもしました。でも、割といい結果を生んでいたようにも思います。



こういう空間のリーダーシップをとる時に必要なのは、とにかく根拠もない自信こそが一番であり、物事を動かす1番の原動力だったりするのだと思います。

「ノッてる人の気迫」とでも言いますか、数多の理屈を超えた求心力とか説得力。



どうして今はそれが出来なくなってしまったのか。それは単純な理由です。


単に年齢のせいもあると思うのです。


つまりは体力的なものと、あとは年食って、バカになりにくくなってしまったのです。どうしても守りに入ってしまう。

無茶振りとか、しにくいですよそりゃ。若いから甘えて「歌って下さいよ〜」なんてお願いしてたのが、日に日に通じなくなる。バカなあの頃なら、なんの苦もなく言えたはずなのに。


バカで居続けるって、なんと難しい事か。

時を同じくして、広い空間に移転してしまいました。これはすごいハンデでした。体力の低下と加齢とに加えて、空気が薄まってしまった。

狭い中で皆んなに声が届くシチュエーションはバカになる上で最も大切で、狭い方が断然やりやすいのです。





人って、それぞれ持ってるサイズがあるんでしょうね。僕の場合は、前の店と今の店の中間くらいで良かったのかも知れない。それは実際にやってみないと検証できなかった。
内装工事、もうすぐ最終の工事が入ります。今のキャパに沿った工事を続けて一年半、もう手を入れる所がない所まで来てしまった。


工事を進めながら、根本的に解決しない付け焼き刃な作業だという事を分かっていながら進めるという矛盾。本当に苦しいのです。本当にこれでいいのか。

そもそも、グランドピアノがデカ過ぎる。あの空間が邪魔でしょうがない。だけどもローンも残ってるし、音質も気に入ってる。そもそも、今の奥行き140のグランドピアノは現行品では最小クラス。これ以下のかグランドは存在しない。ああ矛盾。


ソファもそう。大き過ぎるし、立派過ぎます。すべてのアイテムが大き過ぎます。とはいえ、収納力や居心地を取ると、どうしても大きくならざるを得ない。これも矛盾。


僕の店は色んな矛盾が同居しています。居心地の良さと不便な密着感、豪華さとチープさ。

何かを取ると何かを捨てなきゃいけない。

お客さんの年齢が上がるにつれ、ソファ完備でグランドピアノが聴ける落ち着いたお店にするって決めた時は迷いがなかったんだけどなぁ。


僕の願いは、只々バカでいたいのです。それが、お店を1日も長く続ける秘訣そのものでもあります。


売り上げは昔より上がっていて、本当に贅沢な悩みなんだけど、贅沢をいえばお店をもう少しだけ自分のサイズにダウンしたい。


移転して27ヶ月も経つのに、全然やりにくい。



工事の日程も近づく中、あと少しだけ様子を見てみよう。

なんせ、ソファが12センチも高くなり、劇場みたいになって、僕と目が合うようになります。

つまりは、移転前の店で一番多かったケースの、カウンターの人が着席で、二列目が立ち飲みの時のサイズ感そのままを再現するつもりなのですが、、。



それでダメなら、、、、。




モヤモヤモヤ、、、。


取り敢えず寝ます。







1

calendar

S M T W T F S
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< January 2018 >>

selected entries

categories

archives

recent comment

recent trackback

recommend

南の島に雪が降る (知恵の森文庫)
南の島に雪が降る (知恵の森文庫) (JUGEMレビュー »)
加東 大介
太平洋戦争末期、赤道直下の戦地ニューギニアで慰問団を結成し、7000人の兵士を楽しませた元歌舞伎役者の実話。ジャングルの中に歌舞伎座を建て、馬の尻尾や棕櫚の繊維で結いあげた鬘、パラシュートの打ち掛けや緞帳、ガーゼの糸を間引いた紗幕、そして紙吹雪を用いての雪景色に、遠い故郷を思い出し、兵隊たちは声を上げて泣く。究極の状況下での知恵と優しさの詰まった人々の心の触れ合いを描いた温かい作品。

recommend

伽羅の香 (中公文庫)
伽羅の香 (中公文庫) (JUGEMレビュー »)
宮尾 登美子
何不自由なく育った主人公は、何気なく始めた香道の奥深さに知らぬ間に溺れてしまう。免許皆伝の暁には、と始めた会合。気がつけば彼女の自宅は時のサロンに変貌し、有力者が訪ねて来るまでになる。しかし少数の仲間はそれをよく思わず、時を同じくして太平洋戦争の足音が忍び寄る、・・・・。
蘭奢待を始めとする平安から連なる奥深くも豪華な数多くのエピソードが、読み人を香りの世界へと誘う。
安いもので構いません、お好みの香木を焚き締めながらの拝読をお勧め致します。グッと気分が出ます。

recommend

グロテスク〈上〉 (文春文庫)
グロテスク〈上〉 (文春文庫) (JUGEMレビュー »)
桐野 夏生
悪気もなく、ただ人の不幸を喜びに生きる「私」と、類い稀な美貌を持ち、出会う人々を皆驚嘆させてしまう実の「妹」、人に勝利する事でしか自分の存在意義を見いだせない、容姿に恵まれない和恵。その三人を中心に描かれるQ女子高(私立慶應女子高校がモデルになっている)の超閉鎖的階級社会を舞台に、途中入学組に対しての、富裕層からなる内部進学者からの壮絶ないじめを軸とした数々のエピソードは圧巻。物語全体は東電OL事件を主軸にして描かれており、後半は生生しい売春婦の日常が詳細に描かれている。店主がここ最近の著書で、久々に気骨を感じた作品。

recommend

一の糸 (新潮文庫)
一の糸 (新潮文庫) (JUGEMレビュー »)
有吉 佐和子
何不自由ない造り酒屋の娘茜は幼き日に目を患い、その時連れられて聞いた文楽、露澤清太郎が奏でる三味線の音に恋をしてしまう。大正から太平洋戦争後にかけた女の一大抒情詩。乗馬を好む娘、宝石や宿屋を惜しげもなく買い与えるおおらかな母、その後の茜の命を賭けた壮絶な苛めとの戦い、本物の芸に賭ける壮絶なエンディングと、読みどころが随所に散りばめられた文句なしの女流文芸娯楽作品。

recommend

悪女について (新潮文庫 (あ-5-19))
悪女について (新潮文庫 (あ-5-19)) (JUGEMレビュー »)
有吉 佐和子
公子という一人の貧しい女が中華屋の仲居からスタートして何百、何千という嘘を重ねて戦後の混乱期にのし上がる様を描いた作品。嘘を重ねると言っても、無論、それだけでは決して成功はしない。夜学に通って簿記の試験をパスし、自らの美貌を磨いて出会う男を翻弄し、汗まみれになり生き抜くさまは寧ろ潔い。とある事件後の週刊誌記者による聞き取り調査と云う一風変わった文体で綴られる全編は、時を忘れ、あっという間に読めてしまう。中でも、登場スr数々の大粒の宝石の描写は秀逸。「取材魔」の異名を取る有吉文学の中でも比較的軽めな現代もの。特に初心者にお勧めの一品。

recommend

女系家族〈上〉 (新潮文庫)
女系家族〈上〉 (新潮文庫) (JUGEMレビュー »)
山崎 豊子
船場に続く大商家の物語。入り婿の父が突然亡くなり、残された三姉妹が遺産相続を期に豹変を始める。狡猾な大番頭、突然現れる妾の存在に、三姉妹は関係を結んだ男の入れ知恵や様々な駆け引きを繰り返し、遺産を減らさぬよう奔走する。団結した三姉妹と叔母が妊娠したと思しき妾を抑えつけ、懇意の医師が器具を用いて検査を始める妾宅での描写は、昭和女流文芸史に残る陰惨な情景と云えるだろう。

recommend

 (JUGEMレビュー »)

昭和初期の船場に三代続く女系の老舗足袋屋に生まれた男の半生を描く。女親に反発するかのように愛人を4人も囲いながらも商売に精を出す主人公。迎え入れた新妻の妊娠を探るために肥溜めを棒で掻き回す姑と大姑の陰惨な嫌がらせ、襲名披露の配り物がたった足袋一足だと聞いてケチだと馬鹿にする参加者を尻目に、実は踵の留め金具が純金製で帰宅した一同を仰天させるエピソードなど、船場の粋と意地が詰まった珠玉の作品。

recommend

針女 (新潮文庫)
針女 (新潮文庫) (JUGEMレビュー »)
有吉 佐和子
出征した帝大出の弘一が残した青春の遺書を胸に、パンパンや闇成金の持ち込む針仕事に打ち込む孤児の清子。彼女は過去に踏んだ針が体を周り運悪く跛(びっこ)になるというハンディキャップを持つ。復員した夫は戦争のせいで性格が豹変しており・・。パンパンや気違いといった現代では禁止用語の登場人物が行き交い、戦後の混乱期をそのまま原稿用紙の上に広げたような生々しい作品となっている。

recommend

連舞 (集英社文庫)
連舞 (集英社文庫) (JUGEMレビュー »)
有吉 佐和子
昭和初期の日本舞踏の一大流派、梶川流の栄枯盛衰を描く。先代家元の妾の子に生まれながらも伸び悩む自分の踊りの才能、踊りの天才と謳われる性格の悪い妹、妹しか愛さない母に悩まされる青春時代。しかし、GHQ接収後のアーニーパイル劇場での歌舞伎ショーにてストリップを強要され、大逆転の末成功となり、家元夫人にまで上り詰めてしまう。忌わしい過去と出自に翻弄されつつも、過去をねじ伏せるかのように踊りに邁進し、遂に芸の道に境地を見出す主人公、月の直向な横顔が涙を誘う。

recommend

明治のお嬢さま (角川選書)
明治のお嬢さま (角川選書) (JUGEMレビュー »)
黒岩 比佐子
明治期の令嬢の実態を探る。たしなみ、学力、美醜の葛藤、結婚生活まで多岐にわたる。面白いのは多くの令嬢は今と変わらず贅沢品に執着したらしく、友人の持ち物を嫉む生々しい手紙なども解説入りで紹介されている。その他、当時の流行の髪型や美人術、痩せる薬などの広告資料も収録。

recommend

宮中賢所物語―五十七年間皇居に暮らして
宮中賢所物語―五十七年間皇居に暮らして (JUGEMレビュー »)
高谷 朝子,明石 伸子,太田 さとし
千代田の森の奥深く、宮中賢所に57年お住まいの神職の女性の半生を描いた作品。下界と分断された森の中で祈りを捧げる日々。厳格な穢れの区別(下界のものに触れると潔斎しなければいけない)、四足のものは食べてはならない、毎朝数時間かけて髪おすべらかしに結うなど驚愕の生活と共に、日本古来の自然に寄り添った質素な習慣を紹介する。

recommend

朝香宮家に生まれて
朝香宮家に生まれて (JUGEMレビュー »)
北風 倚子
渋谷・松濤の鍋島公園一帯は戦前、広大な鍋島侯爵邸であり、著者の住まいであった。大空襲で火の海になった屋敷を逃れ、昭和という時代を生き抜いた、旧華族のお姫様の生涯。

recommend

社長 島耕作(8) (モーニングKC)
社長 島耕作(8) (モーニングKC) (JUGEMレビュー »)
弘兼 憲史
言わずと知れた島耕作シリーズ単行本。長い経緯はさておき、弊店が表紙になっております。店主もタキシードでモデルを致しました。
是非お買い求めくださいw

recommend

梨本宮伊都子妃の日記―皇族妃の見た明治・大正・昭和 (小学館文庫)
梨本宮伊都子妃の日記―皇族妃の見た明治・大正・昭和 (小学館文庫) (JUGEMレビュー »)
小田部 雄次
佐賀藩主鍋島家令嬢伊都子。彼女はのちに梨本宮に嫁ぐが、明治から昭和に渡って77年間日記を残していて、その様相は「書き魔」と言わんばかり。初の洋行先のパリで買い物の様子や婚礼、即位式などの華やかな思い出を経て、戦中戦後の倹約の様子や時代に対する落胆ぶりなど。往時の匂いが漂ってくるかのような生々しさ。著者、小田部雄次の解説が当時の世情をわかりやすく補ってくれる。

recommend

写真集 酒井美意子 華族の肖像
写真集 酒井美意子 華族の肖像 (JUGEMレビュー »)
酒井 美意子
加賀藩前田家令嬢の酒井美意子。マナー講師として厚化粧キャラでメディアに登場した姿をご存じの方もいらっしゃるであろうが、彼女は戦前まで駒場の前田侯爵邸に居住していたことを知る人は少ない。莫大な財産と華麗な人脈を、膨大な写真とコメントで紐解く、いわば現代版歴史絵巻的な写真集。必読。

recommend

極楽商売―聞き書き戦後性相史
極楽商売―聞き書き戦後性相史 (JUGEMレビュー »)
下川 耿史
戦後の性関連産業を裏側の視点から取材した戦後風俗史。進駐軍専門のパンパン宿や性具の販売店、愚連隊、ゲイバー、カストリ情報誌、個室喫茶・・・。戦後の性に携わった人々の汗や息遣いが聞こえそうな一冊。

recommend

 (JUGEMレビュー »)

京セラ、auの創始者ににして仏門に入った稲森氏が、街の小さな碍子工場を一代にしていかに大企業へと成長させたかを描く。単なるサクセスストーリーに収まらない哲学や思想を散りばめた珠玉の一冊。

recommend

芝桜〈上〉 (新潮文庫)
芝桜〈上〉 (新潮文庫) (JUGEMレビュー »)
有吉 佐和子
我らが有吉佐和子先生の長編。戦前の花柳界を舞台に、二人の女が艶やかに力強く生き抜く。温厚で情緒的な梅弥、狡猾で気ままな蔦代。共に授かった類い稀な美貌を武器に、ただひたすら戦前、戦後の花柳界を生きる。花柳界独特のお茶屋の仕組みや旦那制度、一本や水揚げなど、判りにくい独自の世界がこの一冊でよくわかる。ストーリを彩る、旦那からの贈り物の三越謹製三百円の帯や、大粒の翡翠の簪、英国土産の巨大ダイヤモンドなど、随所に登場する豪華絢爛な衣裳拵えと、それを取り巻く年増女将との丁々発止のやりとりの描写は必見。店主のバイブルと同時に、不動の一位たる女流文芸作品。

links

profile

書いた記事数:1517 最後に更新した日:2024/03/25

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM