昭和レトロ探訪 小田原「だるま料理店」
久しぶりのレトロ探訪。
所用で神奈川県小田原市に参りました。
偶然通りがかった、とんでもなく迫力のある建物。入ってみる事にしました。
なんだ!この飲食店なのに人を威圧する佇まいは!
達磨という食事処でして、小田原の網元(漁師の取りまとめ役)が大正初め頃創業なさり、西洋と和食のお店として開業なさったそうです。その後、鮨と磯料理、丼料理に落ち着かれたとのこと。
唐破風のファサードはまるで吉原の大楼閣。大好物っ!!
御殿風建築は主に当時の劇場、銭湯、そして遊郭など、人の集まる所に主に使われた様式のようです。
なるほど、後で調べましたら関東大震災で倒壊したところを網元さんがブリの大漁で蓄えた資材をもってして再建なさったとのこと。気合いが違います。
破風はこの通り。緑青が葺いていいアクセントになっております。
唐破風の下から。千本格子が粋に、涼しげに光を通しております。
そして中に入ってみます。
彫り物の衝立。鏡も入ってかなりの迫力です。
鳳凰でしょうか。向かい合っています。好き。
天井は折り上げ格天井。格子がはまっていて、淵より一段上がっています。
二条城や明治宮殿の主たる部屋に使われる、日本建築でもっとも格式の高い天井の様式です。
今では照明が蛍光灯らしきものにかわっていますが、入り口に飾られている写真によりますと、昔は陽刻吹きガラスのシェードが下がっていたようです。
キヌギヌにも3つ下げています、明治末期からの流行のスタイルで、和にも洋にも合うということで広く普及したそうです。
今でも普及型の洋館(いわゆる文化住宅)の応接室や古い病院なんかに行くとたまに下がっています。
座敷も素敵!!
こちらは船底天井で大きな木材がふんだんに使われており、意匠を凝らした跡を感じます。
書院風な窓にオレンジのステンドグラスがあしらわれていたりして、これは正に遊郭のスタイル。少しアールデコ入ってます。
こちらのお店がが遊郭のスタイルなのではなく、大正頃の豪奢なスタイルが大抵このテイストだったんだろうと思われます。
こちらの衝立は今のものかな。残念。
床は焼き物らしきタイル。美しい。
お手洗いもこの通り、少なくとも昭和以降大きく変えていないであろうサイン。
さっそく、天丼を注文します。僕のレトロ探訪の物差し的メニューはカレーライスと決まっているんですが、そんなものはない。なんせ鮮魚が売りなのだそうで、後は寿司や懐石となってしまう。
待つこと数分。
派手な有田焼の丼の蓋から海老の尻尾がはみ出しています!
これぞ正しい天丼の図。
小田原らしい真薯の入った吸い物は鰹の効いた出汁。
糠の香りのする漬物と、海老の乗った天丼。
これは過ぎ去った昭和の頃、サザエさんなんかに出てくるあの味ではないか。
突然上司が磯野家に尋ねてきて、何の食事の用意もしていなかったサザエがフネと相談して店屋モノを取り寄せる。
サザエ「毋さん、やつぱり特上がいゝかしら」
フネ「並で良いんじやないの?あまり高いのだと却ってお氣を遣わせるし」
サザエ「そうね。モシモシ、天丼一つ、並でゐゝわ。急いでね、、、」
来客が申し訳なさそうにモジモジ立つている。手洗いを探しているうちにうっかり立ち聞きしてしまう。
うつむくサザエとフネ、みたいなオチの話のやつ。
あゝ、昭和は遠くなりにけり、、、。
胡麻油の効いた天ぷらには巨大な海老とイカ、きす、茄子と獅子唐。食べ応えはあるのにあまり甘くなく、僕の好みの味。
お冷を頼むとカウンターのショーケースから、グラスが出てきます。あー、こういうの好きだわ。清潔で機能的で僕の店にも取り入れたい。
東京の老舗は大震災と戦火で、神田の一部などを除く殆どの店が建て替わってしまっています。さすが城下町小田原。新幹線停車駅のある豊かな街。
参った。また行かなきゃ。( ´ ▽ ` )ノ
久々のレトロ探訪でした。
- 2015.12.16 Wednesday
- 昭和レトロ探訪
- 22:44
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- by シンスケ