先日、お友達の御招待で楽部の演奏会に行ってまいりました。
この日ももれなく八時からお店なのですが、どっぷり「昭和」に浸るべく、いつものお気に入りコースを自転車で流してきました。
宮内庁ネタが多いのですけれど、決して大日本帝国がとか、皇軍がどうのとか思っていません。古くて美しいものを訪ねると、結局ここに行きついてしまいます。
まずは宮内庁。
この時期、本当に気持ちいです。北詰橋門から天守閣址を抜けて。
はい、楽部。中々レトロな建物です。
荷物検査の後、身分証明を提示して住所をカードに記入します。なんて厳重なのかしら。
ぎええ・・・。吹き抜けになっている。
最初は管弦の演奏。本当に雅やかで不思議な和音。不協和音も盛りだくさんなのだけれど、そうでないといけないんじゃないかな、と思わせるような美しいハーモニー。
場内は超満員。
西洋音楽では割り切れない、微分音が沢山出てくるせいでしょうか。
例えば、一つの羊羹を12個に均等に切り分けた音階が西洋音楽の平均律、すなわちピアノの鍵盤なんですけど、日本古来の音律は12でもないし、大きさにもやや偏りがあります。
日本式で切り分けた羊羹を積み上げると、どうしてもはみ出たり足りない部分が出てしまう。だけどそれが絶妙な景色、味わいに。
「不安定だけど懐かしい」を感じるのかもしれません。もちろん、それを盤石のテクニックで支える日本最高の雅楽バンドの皆様。
舞楽が始まる時、アドリブで勇ましいのを演奏するのですが、その音楽の勇壮な事!
もっとふんわりしたような印象しかなかっただけに、ビビりました。篳篥(リードのついたチャルメラ状の楽器)の三和音・トニックコードが途中で象徴的に鳴るのですが、純正調の聴きなれたハーモニーの為か、逆に耳に突き刺さります。まるでトランペットか、トルコの軍楽隊みたい。
思わず阿修羅の如くを思い出してしまいました。楽部に八千草薫も合いそう。
http://www.youtube.com/watch?v=_H-OyBoG2i03分20秒辺りからですが、ゆっくりお楽しみください。
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話が逸れました。
舞楽も優雅で本当に素晴らしかった。春庭歌が特にお気に入りでした。
また行きたいです。超カッコよかった!!行きたい!(Sくん、ここ読んでないかな?)
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その後はお決まりの日本橋エリア。「催し物終わり→デパートでお食事」 という発想はオバサン的なのかもしれないが、今のところ僕の単独行動バリエーションの内、最高ランクなので仕方がない。これは一生変わらないと思う。
日本橋 M越 特別食堂
(以前のT島屋の時、食べログからこのブログに誘導されたのでまたもイニシャルで。食べログファンか誰か知りませんが無断でリンク貼るの止めて下さい・・・。)
以前書きました
例の食堂以来、何度も行っているのですがいまいち書くタイミングが合わなくって。
日本橋で「特別食堂」と銘打つ、唯一二軒のうちのM越さん側。こちらもまだたっぷり昭和の残り香が残っております。
ファサードから。テーマカラーはグリーン。孔雀石のような紋のある石が柱にも装飾にも使われている。昭和の高級食堂的にはこちらに軍配!
(僕の美意識はいかに忠実に「昭和」か、って所だけですので)
着席。こちらもご丁寧な接客。ホテルオークラだそうで、テキパキした中に優雅さが同居しており、それが美しい。
混雑して皆様イラついてきても、おばあちゃまの団体が無理難題を超スローテンポで要求しても、鉄壁の自制心で笑顔の奥に抑えてらっしゃる。
その術、僕にも教えてほしい。
毎回平均年齢70歳超えで、皆さん大人しいお客様ばかり。本当に落ち着きます。
僕は仕事柄、夜中のサイゼリアとか行くのですが、歌舞伎町近辺のせいか、クソガキが食べ物で遊んでたり、大声出しているようなケースが多いのです。
全員ここで強制労働、いや、バイト研修させた方がいいと思うのです。折角作って下さったお料理。食べるときは黙って美味しく頂きましょう。
そしてメニュー。
こちらも和食、フレンチ、寿司(T島屋は寿司ではなく野田岩の鰻)の3チョイス。素敵。
麒麟の小瓶で一息。これがないと。
僕はよっぽどのことがない限り、和定食の中の上あたりを注文します。なぜなら一番好きだから。
アワビも要らないし霜降りステーキも要らない。けど、鮭の塩焼きとか稲荷寿司は普段の食べ物なのでちょっと違う。
刺身、天婦羅、煮物、茶碗蒸し、吸い物、香のもの。ベタでだけどそれで十分。他に何もいらない。
甘い歌い文句で「春の桜御膳 謹製桜蜜豆付き」とか、間違っても浮気はしない。
うーん、正しい和定食に姿。ここの御味噌汁はちょっと他の店と出汁の効かせ方が違う。なんせ旨みが濃い。僕の舌に合うだけなのかもしれないと思っていたら、ブログで他の方も書いておられた。
ちなみに無料でお替り可だそう。
そして恒例の煎茶。必ず出てきまして、急須をクルクルと回して不思議な手つきで手早く注いで下さいます。
その手つきがとっても手早くて面白いw まるで江戸の茶運び人形みたいです(失礼)
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ここで、他の和定食(中の上)を勝手に比較してみます。上記のより、多少価格帯が上がります。
まずは敵方、T島屋 「特別食堂」
上記のM越プラス1000円程度だったか。さすがに品数も多いし。手が込んでいる。
かなり洗練された印象の味と盛り付け。多少薄味。
国立劇場 「十八番」
甘い、しっかり酸っぱい、醤油辛い、江戸の味。温泉場で売っている瓶詰珍味なんかの味と同じ。
洗練とは真逆の、素晴らしい昭和臭がする。これはむしろきちんと応援して残していかなければいけない。なんでもかんでも洗練されて薄味になることは、僕は全く望まないのです。
「疲労の取れる味」と表現しておきます。
中野坂上 「某蕎麦屋」
食べかけの写真で失礼します。
僕の個人的なお気に入り。豚角煮、コールスロー何でもあり。素敵!でも、天婦羅に刺身、吸い物は押さえている。
安くてしっかり美味しい。ただ、ここの親父の愛想の悪さは半端ない。怒られているようで、いつも悲しくなる。でもまた忘れた頃に行ってしまう。
ただ、ご褒美感はあまりないですね。やはり日本橋という街のお出掛け緊張感(僕にとっては恐怖感)が味の決め手なんだろうか。
素晴らしき和定食御膳の世界!!
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食事の後はお風呂。ということで四谷の蓬莱湯。ここは本当に懐かしい、昭和の風呂屋。
唐破風の屋根の下には漆喰でこて絵のようなものが見える。
木の引き戸。汚いのがキレイ。欲しい。
脱衣場を隠し撮り(すいません)ここも平均年齢70前後。
格の高い格天井。昔の銭湯は豪華で、御近所の集まるサロンのようだったんですね。
インベーダーゲームのテーブルとビニールレザー張りのソファー。ここで日刊ゲンダイの下世話な記事を読むと、疲れが取れる。
ここのお風呂は冬場の開店直後が最高なんです。風呂場の天井に開いた天窓から光が差して、湯船の水面がキラキラ照らされます。湯気も照らされ、幻想的この上ない。
運が良ければ貸切。
忘れられた廃墟の大聖堂のような、えも言われぬ風情があります。
これはなかなか味わえない湯上がりになります。ぜひ一度お試しください。(といって、うちのお客が毎日たむろしてたら僕が行けなくなる)
ともかく、さっぱりして出勤するのは良いものですね。お店への道のりが違ったものに見えますし、店までちょと違った景色に見えます。こういうのが本当のリフレッシュなんでしょうか。
今日はこんな所で失礼致します。