マンハッタン旅行記(その1 街並み編)

 
先日の11/10から一週間、NYCへ旅行に行って参りました。

海外旅行は2年振りとなりました。本当はもっと行きたいと思っていて、時間が自由になる仕事を選んだのもありますが、いざ店を開けると中々行けないものです。(たまに行くから良いのかもしれませんけどね。)

未だに飛行機に乗るとワクワクしますし、旅の楽しみのうち3割くらいは飛行機だったりしますw

ダサイですけど、この気持ちは大切にしたいと思うのです。だって、飛行機楽しいと移動が楽じゃないですか。と言いわけ。


時系列で旅行記を書くとゴチャゴチャになるので、テーマで分けてみる事にしました。

音楽、街並み、食事の三点を中心に、感じた事その他を盛り込んで行こうと思います。

今回は街並み編でございます。ほとんど写真です。スイマセン。


***


アメリカは帰りのフライトで12時間ちょっと。

未だに地球と太陽の構造が判らないんですが、正午に成田を出て東に向かって飛ぶと、夕焼け後にすぐ夜になって、また昼になるんですよね。日付変更線を越えて12時間後、同じ日の昼過ぎにNYCに到着。どうなってんのかな。

ちょうど夜明けの瞬間。

IMG_2006.JPG


得をしたような、浦島太郎のような気分。(みなさんもそんな事思いませんかね)

飛行機は、窓側が好きなのです。よくヨーロッパ便ではシベリアの永久凍土なんか眺めながら物思いに耽ったりしたものです。

凍りついた大地の真ん中に小さ村落があって、ほんの小さな灯りなんて点っていると、切なくなってしまう。(本当に余計なお世話)

今回は機体進行方向左の席。アンカレッジ付近でオーロラが2時間にわたって見えました。

一生見ることないと思っていたんですけれど、これは本当にキレイ。

グリーンとピンクのカーテンがゆらゆら、色を変えながら優雅に棚引く。機内は寝静まっていて、誰も窓を開けていない。皆に教えてあげたいんだけれど、ここはひとつ堪えて一人で見ていました。

写真には写りませんでした。それでいいのかも。




さて、NYC到着。一週間続いた雨も上がったらしく、快晴の初亜米利加。

着いて3時間、まったくアメリカに着いた実感がない。やっぱエンパイアビルとかタイムズスクエア見ないとその気分が出ないのかもしれないですね。
ちょっと洋風の品川から大崎あたり、という感じの街並みが続きます。

そんな中でも昔のトラム?高架のアーチ南下は綺麗ですね。1920年代の狂乱の喧騒が聞こえてきそう。なわけないか。

IMG_2009.JPG



早速宿に向かいます。

僕の伴侶の友人の、NYC在住シンガーの女性のお家を激安で一週間お借りしました。

IMG_2020.JPG

場所はハーレムの黒人街のど真ん中。

とはいってもマンハッタンは狭い縦長の街なので、中心部に地下鉄に10数分で着きます。最近は政府が空き家を借り上げて供給し、治安のよい街づくりを推し進めているのが成功したという事で、とっても治安がよろしい。
夜中に女性が一人ランドリーに行っていたりするらしく、とにかく安心。

大理石の内壁に木の階段。オンボロとはいえ、凝った作りでかなりしっかりしています。

IMG_2018.JPG

お部屋にはピアノが二台あります。ペパーミントグリーンの可愛いお部屋。

羨ましい。

IMG_2103.JPG



もー!!!早くNYCらしい所に行きたい!!というわけで早速街に繰り出します。

草津温泉の宿に着いて、「とりあえず湯畑見に行こうか」と似ています。
見ないと実感が湧かないんじゃ来た意味ありませんもの。



まずは5番街をひたすら歩きます。

いわゆる〇番街というのは縦の通り、〇丁目というのは横の通り。それがほぼ順番に並んでいます。

2nd Aveの54th、みたいに言うと居場所が分かるようになっています。なるほどシンプル。

しっかし、きっちり碁盤の目になっていて縦長な上に、真ん中に四角い公園がある。


・・・まんま京都御所じゃん!!!

というわけで急に愛着が湧く私。

京都でいえば宿が北山あたり、お散歩の5番街は河原町今出川から七条河原町辺りを南下するような感じです。(わかるかな?)

右にセントラルパークを見ながら歩きます。

切ない表情なのは、なぜだろうか。

IMG_2123.JPG

公園に寄り道。本当に美しく計画された街。ここも元はゴミ捨て場だったらしいのだが、人口急増を見越して1800年代終盤に整備されたとか。

IMG_2115.JPG


これは別の日。快晴です。

インディアンサマーという、秋口に気温が上がる頃だったので、秋と夏の両方を味わう事が出来ました。


IMG_2252.JPG


メトロポリタン美術館の前。
街中いたるところに音楽が溢れています。しかし上手いし愛嬌がある。
悪いけど新宿西口地下道のフォーク少年とはレベルが違う、聴き手に喜んでもらう事に徹した音楽。



つまり、僕の目指す音楽です。

思わず足を止める事、一日に一回や二回じゃなかったな。


IMG_2125.JPG


公園を過ぎると最初の角にプラザホテル。バブル崩壊の引き金、プラザ合意の行われたホテルで、今は分譲マンションとホテルの分割営業をなさっているそう。泊まりたかったけど、断念。

IMG_2259.JPG


もー、キリがない。美しく機能的な街。

この街の魅力っていいますと、色んな時代の色んな様式の建物がじゃんじゃん並んでいて、それが味になっているという事。
石造りの建物だってゴシックやヴィクトリアん、アールデコもごちゃ混ぜな上に、その向こうにガラス張りの近代的な高層建築があり、かといってがっかりしない。

これがパリならどうなんだろう。
モンパルナスのタワーは近代高層建築だけど、、完全に街から隔離されている感じを受けます。もし
セーヌ沿いにあったら気になってしょうがないと思う。

NYCはちゃんこ鍋のようなごった煮の魅力なんだろうか。

IMG_2082.JPG

歩くとキリがないのでバスにも乗ってみた。
とにかくバスも地下鉄も充実しているし、終電もない。スイカのようなディポジット方式の磁気カードを買う。

タクシーも安いので沢山乗りましたが(初乗りが400円くらい?)チップを毎回払わなきゃいけないので面倒で、しかも混むのでもっぱら地下鉄での移動となりました。

IMG_2135.JPG



写真ばっかりですみません。

あるわあるわ、みた事ある場所ばっかり。映画やドラマ、カレンダー、絵ハガキもあらゆる所で目にした建物だらけですね。東京だとこうはいかない。

ヘップバーンが朝飯食った宝石屋さんとか、ギャング映画の階段とか、ドラマのあのホテルのロビーとか、キリがない。


上から見てみよう、という事に。何とかとケムリは高い所に上るというのは本当だったようで。


夜を待つ。


IMG_2043.JPG




エンパイアステートビルにて。

入口付近で「並ばずに展望台に登れるチケット」というのを売っている職員がいて、時間もないし買ったんですけど大失敗。ビル内の謎のテーマパークに連れて行かれ、アトラクションに乗せられ・・・。

普通にならんでも割とすぐに上がれるとのこと。みなさん御参考までに。

屋上は圧巻でした。しばし呆然。

ひとつ言えるのは、「摩天楼の夜景は世界一」ですね。ちょっと来た甲斐あったと思った。



・・・昔から観光客っぽいコースではしゃいで観光するのって恥ずかしかったんですよね。街中で地図とか見るのも絶対いや。観光コースに並ぶのも恥ずかしい。

日本人旅行者とすれ違っても「あ、イケてるアジア人のニューヨーカーだ!」って思われたかった。(悪い?)

でも、今回は時間もないし、あまりに面白かったので吹っ切れたのか、思い切り観光丸出しで居ました。

とっても楽しかった。


なんだったらセントラルパークの馬車だって乗りたかったし、ハドソン川の遊覧船にも乗りたかったw

やりたい事しましょう。

という事で後日、ヘリにのって上空から街を観察することに。(バカ)


IMG_2188.JPG

相乗り激安ヘリは20分くらいで13000円ほど。

斜めに傾いて旋回しながらギューンって急上昇する。

オエエエエエエ!気持ち悪い。

IMG_2164.JPG

あ、京都御所が見えた!

IMG_2174.JPG


いつもノリで決めちゃうんですけれど、後で高所恐怖症だと気づく。

前半はほとんど目をつぶっていました・・。


女神。広告だと女神の頬っぺたを横切るって書いてあったのに・・・。

IMG_2145.JPG

ちょうど日没に間に合いました。気持ちよくなってきたぞ。

IMG_2187.JPG


ヘリポート近くの港から夕日が見えました。
本当にキレイ。滞在中一回きりの夕日でした。

対岸に見える細長いのが例の女神。

IMG_2192.JPG


今日はこの辺りで。次回は食事編です。


激安シーフードの街で食い倒れの日々でした。



***


もう一週間を切りましたが、11/3のパーティーもどうぞよろしくお願いいたします。

周りのお客さんからどんどん仮装情報が伝わってきていますが、正直ニヤけてしまうくらい皆さん楽しみにして下さっているようです。これはちょっと見モノですよ。

参加型テーマパーク、とでも表現しましょうか。「自分が主役」と謳うものの中に、それを体現しているものは意外と少ないと思うのですが、今回はそれを文字通り実現できそうな気がします。

自分なりのオシャレをして、どうぞご参加くださいませ。

ビッグバンドとヴォーカルの総勢18名によるリハーサルも中々の仕上がり。あの曲を完全コピーです。まさに1920年代の古き良きサウンドに仕上がっております。


(毎回、終わってから写真などを御覧になって「行きたかった」と仰る方が少なくありませんが、次回開催予定は数年にわたって未定となっておりますので、どうぞ今回の御参加をお勧めします。)



つづく


更新が遅くなりすみません!

 
お久しぶりです。(生きてますよw)

かなりバタバタしておりまして、更新が全くできておりません。


来る11/3のパーティーの準備も万端、皆さんにはきっと楽しんで頂ける内容となりそうです。
口コミで、皆さんの参加率も仮装の噂も充実した内容が聞こえて参ります。

次回の開催予定は全く未定です。
どうぞ、この機会を逃されぬ様、お楽しみに!

お気軽にお友達も御誘いの上、お越しくださいませ。(当日、ID忘れないでね)


10/10からNYCに旅行に行ったのも束の間、実家の母親が入退院をしたり(昨日京都へ飛んで帰りました)、風邪をひいたりとにかくバタバタしていました。

お店もパンクしそうなくらい忙しくさせております。本当に有り難い事です。



このままパーティーが終わったら、クリスマスツリーの飾りつけ(去年の飾りつけ+今年は空中を走る馬車や空飛ぶ気球、鳥が動いたりと、3Dツリーを予定中です)年末からお正月へとノンストップで頑張りたいと思います。


週明けにはブログも随時更新したいと思います。

更新予定

キヌギヌ的NYC旅行記
レトロ探訪関西編 大阪通天閣人情ツアー記
パーティー準備室ファイナル


等々。お楽しみに!!!



店主


昭和レトロ探訪〜今は無きBAR「H」




僕が通うバーは東京でもほんの数件なのですが、ここは取っておき中のとっておき。友人もほとんど連れて行った事がありません。

お客様が守る秩序、そんな見えないバリアーが時間とともに練りあげられ、独自の近寄りがたい雰囲気を作り出しています。

近づきたいけど怖い、でも中に入ると落ち着く、みたいな。

格の高い古寺や神社の境内のようかもしれません。


他のお客さん同様、僕にとっても秘密の花園。

誰も来ないで!思うほど大切なお店でありました。(そりゃ無茶ですけど)ヨーロッパの長くある喫茶店のような、大正時代のお屋敷の書斎のような、尊い場所。


この春、そのBARは長い歴史に幕を下ろしました。


店から程近い繁華街の緑深いお寺の脇に、その静かな店はありました。

静謐、と形容するにふさわしいその空間は、即ちマスターの権化のような落ち着いた佇まい。


長い間、日記にアップするのを躊躇っておりまして、この記事も春先に書き出したっきりずっと非公開にしていましたが、公開する事にしました。

先日、他界されたのです。まだまだ早すぎる死でした。本当に悔しい。


唯一無二、僕のお守りのような場所だったんです。

いい事があったら報告し、悪い事があったら相談しに行く。


いつも笑顔で、そして親身になってお話を聞いて下さいました。

***


木造二階建ての二階部分。壁もカウンターも古いのですが、とにかく磨きあげられていて、清潔この上ない。それに、店内はとてもいい香りがします。


カウンターのみ、確か8席ほどだったと記憶しています。座ると、よい香りのするおしぼりが適温で出てきます。

お酒の種類も豊富。それが、バカラやラリックのグラスで供されます。


お通しも果物、チーズ、カナッペ、季節の料理から選べました。夏はサラダ、冬はシチューやロールキャベツ。

人が行き違えないほどの距離感。しかしそれが窮屈でもなく、間延びしない。酔うに連れてだんだんと、狭さが当然かと思える程心地よくなってくる。これは計算されているに違いないぞ。


IMG_0390.JPG

ここの一番の印象と言えば、季節のお花が年間を通して活け替えられていた事。お正月は松の枝、梅から木瓜、桃、桜が続きまして、八重桜が終わるとドウダンツツジ、盛夏には眩しいくらいの葉物の枝。クリスマスには壮麗なツリー。

そう、僕の店のツリーはここのツリーを大きくおもちゃっぽくアレンジしたものなんです。パクリというかオマージュですかね。

小さな小さな店の、それも屋内なのに森の木の下で飲んでいるような気分、それは僕にとって尊く、得難いものでした。



お店が閉じる少し前、夜中に写真を数十枚、撮らせていただきました。


カウンターの高さが、絶妙に丁度いい。座っているとしっくりと体に寄り添い、なじむ。


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昔、お店での自分の立ち位置、接客スタイルに迷っていた頃。ちょうど若葉の頃にお伺いした夜でした。

凄くモヤモヤしていて。ただ人もいたので相談するでもなく、悶々と飲んでいました。

終電ごろに雨が降り、皆さん帰宅なさって意図せず貸切になったのですが、古いクラシック(歌曲モノだったかな?)をかけて下さり、合図のように会話を中断して二人、音楽を聴き入った事がありました。



目の前には眩しい若葉の樹木、外は雨、素敵なグラス、よい音楽。

物静かな店主。


こんな美しい空間が人の手で構築できるなんて、と静かに興奮した記憶があります。

自然の風景が美しいのは当たり前で、人の手の及ぶ所ではないと思うのですが、時に、人の手の作りだすものは自然のそれを超える時があるんだと思います。このBARの様に。

同時に、そこで僕の何かが弾けました。





「そうか、別に何もしなくてもお店なんじゃん」



・・・今はお喋りですけど。


いつかは「静謐な空間の主」になりたいと思います。


お店に立っていて、常に間が持たない感覚はあるんですよね。会話が途切れた、楽しんでもらってないんじゃないか、そろそろピアノ弾こうかな、という不安。空間恐怖症。


サービス業の人は、つい良かれと頑張ってしまう。

悪く言うと、全品大盛りの人情食堂みたいな、或いは慇懃な日本の航空会社のサービスのような過剰供給の感覚に陥ってしまうことが多々ある。

しかし、往々にしてお客さんは僕と同じ感覚でなかったりする。これは供する側とされる側のいい意味での温度差なんだけれど。


計算づくで放っておく技術。間の美学。


簡単に言うと、ここのマスターはその辺りをとっくの昔に肌で感じて理解されていたように思う。




悔しい・・・。




とはいえ、この店にも昔はカラオケがあった時代があると聞いた、焼うどんもあったらしい。

なんか嬉しい(笑)




店内奥から。



IMG_0399.JPG

僕のこのお店最後のお酒はアルマニャックをストレートで。

思い出と言えば沢山あるんだけれど、いつも美しいエピソードに彩られた、教えの詰まったお話でした。とはいえ全然説教臭くない。格の高い高僧のようなもの静かなお話方をなさる人でした。

彼の話を聞いていると、人生がどれだけ美しいものなのに、取るに足らない小さな事で悩み、損をしているかと思い知らされました。ここでは本当にたくさん泣いて笑ったな。

そしていつも仰る一言が、


「どんなことも受け取る側の気持ち一つなんだよ、シンスケ。」




IMG_0409.JPG

最後に一枚。

どーでもいいけど、お袋似だったはずの僕は、この写真で完全に親父似である事が決定しました。そっくりです。つうか同じ顔。

IMG_0405.JPG



Hさんが仰って下さった嬉しい一言。

「界隈は喧しい店が多いけれど、我々は我々のやり方でマイペースにやりましょうね。」

「我々」・・・。この響きだけで数年は生きていけそうなくらい嬉しかった。


僕はまだまだ未熟ですが、必ずあなたの意思を引き継ぎます。人が安心して休める木陰のようなお店を作ろうと思います。



今日も脱力系でがんばるぜ。


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