今日は横浜、山下公園にある氷川丸を探訪して来ました。
店のドアの改装の為に画像検索していたら、一枚気になる画像が出て来まして、それが氷川丸のだった、というわけ。
しかも店の新ドアのデザイン打ち合わせは明日が最終日、午後には制作会社に発注がかかってしまう。
これは居ても立っても要られない。
1930年に製作されたこの氷川丸は主にアメリカ航路に使用され、チャップリンやヘレンケラー、秩父宮さまや、大リーグの野球選手、そして多くの旅行者を運んだとあります。
戦争中は全体を真っ白に塗り、病院船として使われたそうな。
魚雷を二発受けても沈まず、戦後は南方戦線の兵士の引き揚げや物資の輸送にに使われたりして、永らく使われるも老朽化により引退、その役目を終えました。
時を経て、今じゃ山下公園に係留されたまま、ビアホールやライブの会場になっているこの船、何と200円で見ることが出来るんですって!
ずっと気になってたんですが、今日やっと見ることが出来ました。
まずは全景。携帯で撮ったにしては我ながら絵葉書みたいないい写真だ。
みなとみらい線の元町中華街駅から徒歩二分の所にあります。新宿三丁目から直通で行けてしまう、この気軽さ!
何で今まで行かなかったんだろうか。
今日は寒いながらもいいお天気でした。出発進行!!
船へと上がるステップ。何ていうのかな?
陳腐な表現ですが、映画みたいだ。次に来る時は紙テープ持ってこよう。
大階段
客船といえば大階段。鉄の鋳物で出来ています。氷川丸は氷川神社からその名を取られているそうなのですが、その八雲のマークもあしらわれております。
大階段もう一枚。階段、好きです。
なんて優美なお姿。
一度、素敵なドレスの淑女をリードして、タキシード、いや燕尾服で上がり下がりしたいものです。
一等食堂
床が軽く湾曲しています。つまり、中心が盛り上がっているのです。太鼓橋のような感じ。
これは後でそうなったのか、元々そうだったのか。
人がいないもんだから僕はずっと座って居たのですが、後半なんだか気持ち悪くなりました。
銀食器
当時のオリジナル、スターリングシルバー(つまり925/1000の純銀製)陸上のものより数ミリ厚くして、丈夫に作ってあるそう。って簡単に言っても、銀だからお値段が心配になる。
マナー指導
馬車道の日本郵便本社ビル三階に練習室を設えて特訓したそうです。ありきたりな中型船が世界で人気を博したのにはサービスの質が当時の世界最高クラスだったんですって。フムフム。
大食堂天井
船内には明かり取りのガラスの天井が目立ちました。アールデコの影響たっぷりな贅沢な天井ですこと。
大食堂の窓からも海が見えます。
アールデコなチェスト
んー、正しいデザイン。
読書室
大きなグランドピアノとソファ。壁の絵はなんだろうか。
読書室ドア
彫り物の一枚板でした。驚くべきは、全ての部屋のドアの意匠が違ったこと。これは参考になります。
本棚
数冊、オリジナルが陳列されていました。
ふと気付いたのですが、流石に古い建物、なにやら懐かしいというか、独特の匂いが染み付いているのです。
カビと埃と、機械油の混ざったような独特のすすけた匂い。古本屋の古い紙の匂いのようでもあるけど、もっと複雑な。骨董屋のそれとも違う。
ずっと思い出そうとしていたんだけれど帰りの電車で思わず膝を打った。
あっ!思い出した!!
箱根の富士屋ホテルの旧館、花御殿の客室の匂いでした。
8割がカビ臭なんだけど、カビすら死に絶えた後の、乾いたような芳ばしい香りというか。うまく伝える術があればいいんだけどな。
いつかの床屋も、パリのオペラ座の廊下も僕の通った小学校の旧校舎も、実家の近所の古い図書館もルーヴル美術館の裏側も白金の朝香宮邸も、全部この匂い。
なるほど、古い場所共通のええ香りじゃ。うちの店も早くこの匂いがしないかしら。
死ぬほど落ち着く。
読書室柱
デコ特有のモダンな彫刻が施されていました。いちいち、美しい。
デッキ
本当に誰もいないの。海に浮かぶ200円で乗れる客船。ここは穴場ですよ!!
Aデッキ
窓もいちいち素敵だな。
喫煙室
ドアには真鍮のポールが。うーん、これこれ。これを見に来たのですよ。
実物を見て、斜め配置は些か不安定に思いました。飽きが来る可能性と、引き戸なので力の掛け方が難しいような。
写真で見た時は飛び上がって保存したんだけどなぁ。
別の入り口のをもう一枚。こちらは二枚扉なので意匠が違う。芸が細かいなぁ、畜生。
室内
ここも素晴らしく落ち着いた雰囲気の内装。僕の好みのウッドパネルで四方を取り囲んだ重厚なスタイル。
天井
ここにも明かり取りのガラスが。隅には小さなBARが。小さなカウンターに小窓がついており、ガラスがはまっていて、とっても可愛らしかった。
一等特別室 客室
ここは他の部屋に見られるアールデコではなく、もう少し古い様式の重厚な内装で纏められていました。
国会や駅の貴賓室に典型的に使用されているあの様式、です。(わかる人少ないですよね)
寝室
思ったのは意外と狭い、んです。8畳くらいしかないんじゃないか。
タイタニックの成金は、もっと広大な部屋に泊まっていたぞ。
応接室
寝室から続きの間の応接室。ステンドグラスがハマっています。しかし、海の方にある窓、ステンドグラスじゃ外が見えないのではないか、という庶民の邪推。
艶やかに光る木材の数々。あー、やっぱこれこれ。マホガニーかな。油ニスが飴色に変色して、経年劣化で何とも味わい深いです。
僕はこの「古い西洋式木製高級建具の経年変化による艶」フェチなのです。理想は1930年ごろのもの。
ウチの店で一番いい木を使ったモノは、実は奥の紅茶の棚なのですが、(ホンジュラスマホガニーのイギリス製)やはりいい艶に、一人撫でながら悦に入ったりしてます。
噛り付きたい。許されるなら全て剥がして持って帰りたい。
別のドア。
やはりこちらもアールデコの軽やかな印象。
操舵室
ここも、かわいい!
あー、全部欲しい。
舵
誰もいないのでカラカラ回しながら叫んでました。「取り舵いっぱーーい!!」
伝声管
各部署のがここに集約されているそう。
船長の誕生日に驚かせようと、全員でハモって歌ったらさぞ無気味な音だろうな、などとまた妄想しながらニヤニヤ眺めてました。
船長室
操舵室のすぐ裏にあります。ここも男性的な、質実剛健な内装の部屋。
僕はこの船の中で一番好きな内装でした。お店用に赤い布やシャンデリアで飾ってはいますが、実はあまり華奢なのは好きではないのです。
ここにも、一人でしばらく座ってました。トミー・ドーシー楽団のストリングスの入った極甘なアレンジのジャズバラード(やはり1937年)なんか聴きながら、海を眺めたりして。
船長室ベットルームのドア
いやー、かっちょいいわ。やっぱ好き。落ち着くし興奮する。
今のところ、この世の中で一番の関心事だ、と心から言い切れる。
お風呂
ここは寒そうだな。お風呂や水周りに関しては、絶対今の方がいい。
機関室
ここからはすえた機械油の匂いが、これでもかと充満しております。
深呼吸して記憶に刻み込む。肺に溜め込む。
スーハースーハー。
エンジン
デンマーク製の巨大エンジン。詳しいことは他のサイトに譲りますが、80年近く前によくこんなもの作って動かしてたな、と感心。
電話室
周りがうるさい時にこれで連絡を取っていたらしいのですが、かなり可愛い。上のジリリリーも、必要だから付けたのに違いないのに、装飾的にこれ以上なく可愛いと感じる。用の美って言うのかな、必要なものは美しいのだ。(考えすぎかな)
アップ
三等客室
これは辛そう。二段ベッドが沢山あって、揺れるし夏は暑いし冬は寒いし、、。
船内食やお風呂、アメニティも気になるところだ。(展示なし)
、、、ざっと見て参りましたが、書ききれないくらいの魅力に溢れたこの氷川丸。
モールス信号の体験機や、伝声管の実演、なんやかんや盛りだくさんでした。
節約デートに、外国のお友達の観光に、Facebookのプロフ写真用に、どうぞ活用下さいませ。
月曜定休日、最終受付午後四時半となっております。
しつこいですが200円。これは最近の200円で一番価値のある使い方ではないだろうか、とさえ思うのです。
また行かなきゃ。
いつも心に氷川丸を。(笑)
因みに、氷川丸って打つたびに氷川きよしさんの顔が過るのですが、どうしたものでしょうか。
どーでもいいか。
因みに、当店のドアの意匠は銀座の喫茶「トリコロール」さんの回転ドアの雰囲気をパクることにしました。トリコロールさん、勝手に感謝してます。ありがとう。
上の4/5はガラス、真鍮のパイプ二本を平行に渡してグリップにし、3Mの明るい色のダイノックシートで木目調に。足元には真鍮板の保護板を鋲で打ち付ける事にしました。ガラスには前のと同じ箔を金で押します。
12月最初の週にお目見え予定、です。
どうなることやら。