春の新メニュー!(衝動買い)



遊郭もダイエットもハゲ治療もいいけど、たまにはお店の新メニューを研究しないといけない。何しろ僕の本業なのだから。

冬場はホットワインやホットカクテルにお茶など、温かいものなど出して、レギュラーメニュー以外にもまあまあバリエーションがあるんだけれど、春から夏にかけての目玉商品がモヒート以外で定着していないんですよね。


特に真夏は窓が大きいせいか冷房が効かないので、やはり冷たいメニューが比較的よく出るようで、開発の余地があると思う。前から試行錯誤はしていたんだけど、中々ピンと来なかった。

昔やったのではフレッシュトマトをブレンダーにかけて作るレッドアイ。

結婚式の引き出物ブックから注文した小型化ミキサーで生トマトを粉砕して生ビールを注ぐ、見た目にも涼しい逸品、の筈が、、

トマトの味が何にもしない、恐るべし現代の薄味トマト。トマトを3個に増やして作るとようやく味がしてきたんだけれど、売値が合わないので却下。チョコレートパフェなんかもやったけど、場所を取るわ不便だわで効率が悪い。

第一、カクテルじゃないじゃん、パフェって。



そんな事を理由に、「今のままでいいよね、、」と早三年。


今日たまたまヤフオクを見ていたら昔いた会社で使ってたやつが出ていたの!!




高級機種にしかない騒音防止カバー付き(これがないと騒音で耳がヤられる)、iPhoneも粉砕できるというパワフルな一品。

ボタン操作時に操作音が出ない為、新品が訳あり特価で出ていました。僕はピッピッていう操作音が大嫌いなので、寧ろ何の問題もない。


そろそろ思い腰を上げるべきか。にしてもまだ高い。どーしよ。


、、、。



うおりゃ!っとクリック。即買い。



しばらくは家で研究して、春から新メニューとして出そうかね。



基本のレシピは果物の皮を剥いて冷凍してストック、アルコールとクラッシュアイスとガムシロップを加えてガリガリブレンドするだけ。上にミントを添えてストローとロングスプーン。これならモヒートと全て兼用できるし、一日1メニューなら平日一人でも対応できる。いいね。

フローズンバナナのダイキリとか、桃、スイカ、パイナップル、メロン、ざくろや柿。業務用食材定番のミックスベリー、マンゴーも。皮剥いて凍らせときゃ何でも出来るね、こりゃ。


筋トレ中の方向けに、トッピングとしてプロテイン入りもいいな。並プロテイン、ダブル、増し増しなど。


(イメージ)



一つ心配なのはガスコンロを撤去しないといけないのでしばらくは温かいものが出来なくなる。

もう一つは音がうるさいという事。説明では最短で40秒の攪拌で出来上がるものの、その間お客さんは工事現場の通行人みたいになってしまう。



何としても現場から目を逸らさなければいけない。経験上、カバーをしてもそこそこうるさいのだ、こいつ。




んー、



一曲40秒くらいのド派手なマーチが何かをその都度流して、「スムージー賛歌」として定着させようか。

たしか、たまに流す落語の出囃子も40秒くらいだったぞ。

暴風雨とか猛吹雪の音源のサントラ買うか。ならむしろ工事現場の音源でもいいかも。そうすると黄色いヘルメット欲しくなる。


それか、手品でも練習しようかねぇ。
(´・_・`)



なんかいいアイディアあったらこっそり教えて下さい。

あと、飲んでみたいフローズンカクテルのレシピも募集中どす。


このマシンは三月下旬から登場となります。お楽しみに!






フェニーチェ歌劇場



イタリア旅行まで一ヶ月ちょっと。旅行前は盛り上がるだけ盛り上がって、必ず火が消えるのです。

年末に盛り上がって、調べ尽くして、今は思い切り冷めてます。10日も休む罪悪感の方が勝ってる状態。(貧乏性)


でも、どうしてもオペラを観たかったので思い腰をやっと上げてチケットを取ることにした。

夜は暇だし、日替わりで違う演目をやってるんで、できたら何本かは観たい。

先ずは3月6日の椿姫。フェニーチェは椿姫初演の劇場だけに、旅の唯一の思い出に観たかったのもあります。どうせ今回の旅は一人、リュックにスニーカーで歩き回って、食事もショボいに決まってる。旅は山場がないと盛り上がらない。



1792年、ベネチアに建てられたオペラ座。二回焼けてて、二度とも再建されたその名も不死鳥な歌劇場。二回目の火事は1996年、出入りの電気工事業者が工事遅延の違約金を払うのが嫌で火をつけたとか。


全く、何て業者だ!(禁固7年の実刑)







そしてチケット購入。言葉がよくわからないし、増してや南欧のユルい国と金券のやり取りなんて怖いから日本の代行業者のサイトから頼むことにしたのです。ニューヨークの時もそうだった。

つーか、席まだあんのかね。


ネットで一番上に出て来た業者のサイトから記入フォームに日付、演目と「予算二万円で何とかしておくれ」とリクエストを書き込む。

直ぐにメールが来て、「その金額では天井桟敷(上過ぎて歌手のツムジが見える)も取れませんよ、フェニーチェは会員が席を抑えている為、どうしても高いのです。既に売り切れているが独自ルートでまだ取れますので、是非他の席もご検討下さい」との事。

ふーん、そんなもんかねぇ、、(´・_・`)


そこで、各クラスのリストを送ってもらうと、メチャ高い。一番いい席が券面205ユーロに対して58500円!!
205ユーロって1ユーロ140円として28500円でしょ。なんでコミッションが3万もするのかね。仮に二枚とったら手数料だけでイタリア行きのチケット買えちゃうだろ。




ビビりながらもフェニーチェのサイトに初アクセス。簡単な英語に従って日付から座席表を見たら分かり易い表示になってる。

しかもパソコン、カーソルを合わせると勝手に日本語に変換してくれる。(汗)

Googleだかなんだか、こんなに技術が発達してんのね。知らなかった。


そして、、、全然空席あるじゃん、、。


ネットから支払い出来て、発券手数料は13ユーロ位。バーコードをプリントアウトして窓口で渡したら直ぐに入れるんだってさ。最悪、バーコード失くしても何とかなるらしいそこはイタリア的なのか。

前日のセビリアの理髪師も含めて二日間取ったった!



一階平土間の水色ゾーン、前から四列目で148ユーロ。日本より安いじゃん。

オペラは気取ってるとか難しいとか言われますけど、中々イイものですよ。

全てアナログの人海戦術で音楽はマイクなしの生音。作品によるけれど、勧善懲悪の分かり易いストーリーのもある。演出も様々。昔の人の娯楽だからその辺は上手く出来ています。

美と情熱と知恵が詰まったタイムカプセルみたいな感じでしょうか。


アホでも使える支払いシステムに感謝しつつ、チケット代行屋さんは粗利が大きいんだな、と計算機を叩く感慨深い冬の午後でした。

因みに代行業者は、六本木の所でこの道では有名らしいっす。上品な年配のご夫婦なんかこういうサービスを利用されるのですかね。僕はいらんわ。


英語だからって、面倒がらずに何でも調べなきゃダメですなぁ。


次はebayか?!












楽してダイエットってか?!


前に、ランニングの妄想ブログを書いてから随分経ちますが、その頃より4キロ近く増えてしまいました。ブヒブヒ。

トレーニングはしてるんですよ、ウエイトとかマシンとか週に二回だけだけど。



いやいや、理由は簡単、食い過ぎなのです。凄い食ってる。

外食で居酒屋、とんこつラーメン、寿司、うどん、焼き鳥、焼肉にチャーハン。家では冷凍のパスタ、サッポロ一番とか食パンにバター、キャンベルのクラムチャウダー。

ガツガツ食うと疲れが取れる。よく眠れるし肩こりが治るし、悩みも吹っ飛ぶ。

でも、太るとブスになるので全体的に自信がなくなる。

最近店ではしょうじくんばかりがモテる。けしからん。


どうしたら自信が取り戻せるのか、それは簡単で、痩せれば八割は片付く。

じゃあ痩せろって話なんだよね。


でも、食いたい。高い食事でなくていい。好きなものを寝る前にどうしても少しは食いたい。


そこで、折角ブログをやってるので食べ応えのあるメシを研究してみることにします。私、こう見えて調理師免許も持っているのだ。

作ってると匂いでお腹が膨れる効果も期待出来る。「お母さん作っててお腹膨れたからホラ、アンタ食べなさい」の原理。

メニューの条件は

自分の好きなメニュー
食べ応えがある
野菜がたくさん入っている
作るのがラク
安い
一食あたり200kcal前後
調理器具はボール一つ、フライパンくらいまで(洗うの面倒くせーよ)


です。野菜を使って肉の味がするのが健康的にもよく、精進料理のような料理が理想とも言えます。


「北新宿熱量制限夜食研究会」ここに発足致しました!!



第一回メニューは「ヘルシーお好み焼き」です。ありがちかな。

(5回くらい試作して200kcal前後になるよう調整しました。)

材料

キャベツ千切りボール一杯200g(46kcal)

小麦粉大匙一杯 20g(72kcal)
卵一個(85kcal)

お水40cc
ホールコーン 少々
ほんだし 少々
塩 少々
とんかつソース ごく少量
鰹節 あれば少し



ソース、鰹節さえ微量に入ればお好み焼きの味になります。コーンで食感をプラスしました。もともと入ったキャベ千も売ってます。

「ほんだし」は僕の古い友人のような存在。入れたくない人はなくてもいいと思いますが、病人食のような味になってしまいますので、代わりに荒節の削り粉なんか入れても良いでしょう。




キャベツ千切りを先にボールに入れ、小麦粉を振りかけます。ここがダマにならないポイント。ただサクサク混ぜるとよいでしょう。



そこに全卵一個と調味料を入れ、さらにサクサク。




しっとりと、コールスローみたいになります。小麦粉20gで、果たして10倍の体積のキャベツが一枚に繋がるのでしょうか?!




蓋をします。最初は強火で。





はい、この通り。小麦粉そんなに要らないのかもね。



仕上げにごく少量のソース、鰹節を。

これがあると何でかお好み焼きの味になります。





中はしっとり。ってか、あたしゃ中は生でもいいくらい、レアが好きです。コーンがプチプチと、食材の取り合わせの貧しさを忘れさせてくれる。




このサイズの、お好み焼きってばカロリーがかなりある。酷いとモダン何とかで1000kcal前後にもなったりする。五分の一まで抑えれば、まあ夜中に食っても許されるだろう。


最近はジムでも走り出しました。とにかく、明確な意思を持って痩せます。話はそれから。


頑張って飛田新地の売れっ子になるぜ!!

(妖怪通りにて人情お好み焼き屋も有りかもね。)



お休みなさい。



「最後の色街 飛田」スピンオフ編




誰からもリクエストを頂いてませんが、勝手にスピンオフ企画です(´・_・`)

年が明けてからのブログの内容はというと、ハゲ治療の日記と風邪ひいた話と売春屋の話って、、、。

飲み屋のブログってこんなんで良いんだっけ。良いんだよね。





昨日書いた、飛田遊廓を描いた本を読んだ後、まゆ美ママがどうしても気になり、検索をかけまくったらママのブログに行き当たりました(笑)

ご本家は既に削除されているのですが、どなたかが魚拓をとっておられました。有難いことです。

掻い摘んで書き直し、ここに掲載します。

かなりエグい内容ですので苦手な方は絶対にスルーして下さいね。




まずは軽く登場人物を解説しておこう。

北新地の売れっ子ホステスを経てデートクラブを経営するも、ヤクザとの諍いや、公衆電話ボックスに貼るためのピンクビラの印刷代の高額さ(違法なので最低数十万円するそう)などに閉口し、遂に金策をして飛田遊郭にお店を構えたまゆ美ママ。この後、10年間で純利益にして13億を稼ぐ事となる。

やはり箱を持つ充実感は素晴らしいと振り返って書いている。

伝統を守りながらも新しいシステムを導入し、あっという間に遊郭内で押しも押されぬ人気店に上り詰めました。


働くのはママと、呼び込みのオバちゃん二人。この日は86歳のベテラン、おてるさん。彼女は大昔から飛田遊郭で働くバリバリの呼び込みさん。前は年増通りで呼び込みをしていたが、縁あってまゆ美ママの元へとやったきた。最近尿漏れがあり、床を汚すのでまゆ美ママの言い付けで着物の下に嫌々オシメをしている。アルツハイマーの症状も見られるが、今日も元気に頑張っている。

女の子はこの日も数人がスタンバイしている。心優しい春奈や、美人だがお金に執着の強い桃子。その他も皆、常連のついた若い売れっ子ばかり。


そんなある日常の一コマ。







おてるさんが開店間も無く(午前中と思われる)道に出て呼び込みをしている。

「毎度おおきに!旦那さん、どうだすか?若い子いてまっせ!」


そんな中、車椅子の若い客が現れました。
おてるさん、「お兄さん、ごきげんさん。ちょっとお兄さんは無理ですわ、エヘヘ、、」と断る。

おもむろにその客は五十音を書いたボール紙を出し、指でなぞっていきます。


「オネガイシマス」



おてるさんは困った顔で「エヘヘ、わて、字が読めまへんねん。学校行ってまへんのや。偉いすんまへんなぁ、、エヘヘ、、」

左右、向かいの店も二人のやり取りを興味深げに見守っています。新参者の繁盛店が困っているのがさぞ面白いのでしょうか。いつもは賑やかな通りの呼び込みの声もシーンと静まりかえっています。


おてるさんと車椅子のお客は「オネガイシマス」「すんまへんなぁ」を繰り返すばかり。


必死にボール紙を指でなぞってこちら(まゆ美ママ)の方を見ながら「ウーウー」と言っている。

私は「15000円持ってるか、兄ちゃん?」と大きな声で尋ねてみたが、耳は別に悪くないのか「ウーウー」と応える。

なぜか不思議に、同じ発音でも返事をしているのが伝わる。

「おてるさん、ちょっとI君呼んできて!」(近隣の知り合い男性と思われる)

私はこの客を春奈に上げる(客を取らせる)事に決めた。歩けないと言うより、一人で立てない、話せない客。

これも飛田で初の試みだったと思う。どんな客でもお金を払えば客なのだ。

Iが来てその客を車椅子から抱き上げて二階へ運んだ。ところが、この客は一人で座ることも出来ないのだった。

炬燵の前に降ろしてそのまま手を離すと、背中が年寄りのように丸く曲がり、身体全体が海老のように反っていて普通の座る姿勢にならまいまま、壁の方に倒れていき、壁に頭をぶつけた格好で止まってしまった。

自分では姿勢を戻すことが出来ないのでそのままの格好で「ウーウー」と言って怒っている。笑ってはいけないのだろうが、全員で大笑いしてしまった。変に同情されるよりも素直な私たちの態度に安心したのか、ボール紙を指でなぞって少し事情を聞かせてくれた。

「25歳・阿倍野区在住・飛田には今日初めて上げてもらえた・店先へ行くと怒って塩を撒かれたこともある・童貞ではない・お金は母親から貰ってきた・女の子はこの子でいい・飲み物はオレンジジュース・名前はしんちゃん。」









しんちゃんは言葉が喋れない。体は健康って言ったらおかしいですが、寝た状態にしか身体が置けないだけで車椅子には上手く座っていられます。頭も普通で知恵遅れではありません。手は自由に動きます。注文したジュースも寝た状態で上手く飲んでいたそうです。


さていよいよですが、ズボンを一人で脱げません。春奈が優しく声を掛け、脱がそうとすると、、、。

ズボンまでは良かったのですが、パンツを脱がそうとすると、終わってしまったそうです。

優しい春奈は時間までじっとおっぱいを揉ませ続けたそうです。

ボール紙を取り出し、指でなぞって「アリガトウ」。
しんちゃんはその日嬉しそうに帰りました。

しんちゃんは一週間と経たないうちにまた来ました。私は「しんちゃん、お母さん心配せえへんのんか?」「こういう所に来ているの知ってるのんか?」しんちゃん、首を縦に振りました。

来るたびに二階の部屋での状況は進歩していきます。慣れてくると次に来る日を春奈に告げて帰るようになりました。
しんちゃんが来た日は不思議な事に、いつも以上にお店が繁盛します。そのお陰で、しんちゃんは店の者に大切にされています。ニコニコ顔のしんちゃんは福の神なのか、それとも身体障害者に幸せな気分を与える私たちに神様からのご褒美なのか、、。

お金のことしか考えない桃子ですら、チョコレートや飴を買ってしんちゃんに渡します。あの嬉しそうなしんちゃんの顔は今でも忘れません。

そんな幸せな気分に浸っている私たちに向って、真正面の店のオバハンは聞こえよがしに何と、

「あんなカタワもん上げんでもいいやろうになぁ!女の子も可哀想や。」

私がどんな客でも上げてお金儲けをしていると言いたかったのでしょう。私はプチッと切れてしまい、玄関から裸足で飛び出していました。


「ゴルァ、ババァ!何人の店に因縁つけとんねん。お前んとこの女シャブ中やろ!警察にチクッたろか!悔しかったらお前んとこもこんな客引いてみろや!一万円のシケた客ばっかり上げてんと、親方呼んでこいや!!」

元々気に入らない店でした。水撒き用のホースを掴み向かいの玄関の中に水を思い切り撒いてやりました。

「コラー、水撒いてもろたら礼ぐらい言わんかい!!この田舎もんが!!」

無茶苦茶でした。九州は嬉野温泉の置屋から女を送ってきて入れていて、オーナーは九州の人です。今までは自分のところが人気の店であったので、天下を取ったような顔で営業していました。ところが私の店が開店してからは繁盛していることが気に入らず、何かと意地の悪い事を言ったりしていました。客の車を店先に停めることや、お客を取ったの取らないのと因縁をつけてきてはいましたが、ずっと我慢しながら二年間。ひっくり返す機会を狙っていました。

おてるさんも店の女の子達ももう、大喜びでした。




(一部を再構成しています)



にしてもスマホから全文打ったから手首が痛い(何やってんだか)

最近、小説を読んでもなかなか感情移入出来ないのに、今回ばかりはすっかりハマってしまった。僕はこの二日間、この極端な街の住人になってしまった。

感情移入どころか、思いを巡らせると人々の表情や息遣いが聞こえるよう。


何だか彼らが好きになってしまった。




ちょっと見学に行ってこようかねぇ、なんて。(ちょい本気)










「最後の色街 飛田」




数日前、インターネットにて井上理津子さんの書かれた本作に出会い、複雑な感銘を受けております。


その感想やらで筆を取りました。暫しお付き合いくださいませ。


大阪の飛田新地、と、聞いて何人くらいの方が解るでしょうか。



大阪の南、通天閣の南側に広がる広大な遊廓が、大正七年に開かれたその頃から現在まで、そっくり残っています。



売春防止法(1958年施行)によりソープランドなど一部の売春地域が特例として残された他は、一夜にして廃止になったのですが、この飛田遊廓はエロの聖地として未だにその姿を留めております。




なぜ、売春防止法に逆らって風俗営業が続けられるのか?


カラクリはこう。


「料理組合」に所属する「料亭」は料理という名のお茶とお菓子を出す。その値段は平均で20分で一万五千円。


中居さんは二階の個室に「料理」を運ぶ。お客様と中居さんは自然に恋に落ち(自由恋愛)、事をいたす、という具合。(もち本番です)


これなら売春防止法には引っかからないという建前になっている。なるほどね。


だから、本番中に脳溢血などてお客が倒れた場合、二階から路上に引きずり出してから警察を呼び、「人が倒れてはる!」となるそうです。建前とはいえ恐ろしい。


因みにソープランドは、経営者が場所貸しする浴場に、女性が個人的に任意で売春をしているという建前になっており、仮に経営者がシフトを組んでいたりすると「管理売春」となり立件が可能となる。

つまりは組織的な管理売春を禁じているのが売春防止法の骨子なのです。あくまで建前ですけど。


話を飛田に戻します。

400m四方に約160件の料亭。北から「青春通り」「かわい子ちゃん通り」「年増通り」「年金通り」「妖怪通り」と年齢順に並ぶ。


ほぼ全ての店が二間間口の上がり框に客引きのやり手ババァと、売り手であるお姉さんが、ちょこんと座るスタイル。

お姉さんの顔が映えるようにどこも赤い絨毯敷に赤いライト。





こんな店が160軒も軒を連ねる。




料亭を経営する経営者、お客を引くやり手ババァ(通称オバちゃん)と主役である中居さん(通称女の子)、料亭組合、目と鼻の先にあって見て見ぬ振りをする所轄の警察、治安維持と女の子の求人を補給するヤクザと、遊廓周りの飲食店経営者、何よりこの街を必要とする多くの男性客。

関わる多くの人間の暗黙の了解と複雑な秩序によって、この極めて繊細なシステムは保たれているのだ。


彼らは一切、商売に関する質問には口を開かないという。飛田新地のど真ん中で喫茶店を営む店主ですら、一体何のお店が並んでるのかと聞かれても、「何やろねぇ、よう知らんわ」平然とトボけるらしい。

悪いこと、脱法行為をしているという認識は勿論のことあるらしい。


しかも、この職業に関わる地域の家族を含めた多くの人々が差別を体験したとの理由もあり、さらに口をつぐむばかり。

なるほど、そりゃそうだわな。





そこでこの筆者の登場。

井上理津子さんという方、御歳58歳。

この閉鎖的な街に食ってかかるのも納得な、かなり骨のある女性ライターなのです。


筆者はこの街と出会い、強烈な嫌悪感と共に深い関心を抱いたという。


そして、ライターとしての使命感もあり、少しづつ取材を敢行する。


まず手始めに遊廓を足で周り、正直に正面から取材を申し込む。


先に述べた通り限りなく閉鎖的なこの街は取材はおろか写真撮影も禁止されている。しかも中年女が営業中に正面切って訪れるものだから尚更冷遇される。無理はない。


「女の癖にアホか」「気色悪いわ、あっち行ってんか」「どアホ、素人が深入りしな」とどの店からも一蹴され、塩を撒かれる。


最初、僕は読んでいてこの筆者はアホなのかな?と思ったくらい。


しかし彼女はめげることもなく次なる作戦へと打って出る。

知り合いの好色の男性に軍資金を渡して、遊廓に行かせて話を聞き出すという安易な作戦。

これも訳なく撃沈。プライベートを詮索する客は先ずもって無粋という事で嫌われるのだ。


そこで、筆者は女性であることを利用して、店が跳ねたであろう中居さんが集まる居酒屋に潜り込み、週刊文春を読みながら毎晩張り込んで、時間をかけてそこのマスターやお客と仲良くなるのである。


その居酒屋のマスターも実は大きな老舗遊郭の息子で、ちょっと訳ありだったりする。折檻部屋だった開かずの間の話だとか、胡散臭すぎてかなり面白い。

面接の申し込みにも電話で応募する。


その次にはすぐ近所の朽ち果て、古びたアパートを入念に周り、住んでいるであろう「やり手ババァ」に近づき、巧妙に話を引き出す。(部屋に上がり込んでお好み焼きを振舞われる筆者)


勢いが付いた筆者は、あろうことかヤクザの事務所に乗り込んで取材をし、斡旋などの背後にある情報を得る。(ヤクザに出された食べ物は何が入っているのか分からないのでシールで封をされた牛乳の類以外は口にしてはダメ、というのが掟らしい。)


何と正攻法、爽やかな取材方法。


ここからもう勢いが止まらない。段階を経て、筆者はこの街の住人は思ったより怖くない、と悟ったそうです。同時にだんだん筆が乗ってくる、とても分かり易い筆者。


所管の警察や料亭組合(ここが過去に橋下現大阪市長と繋がりがあったりして興味深い)に真正面から切り込むわ、知り合いの眉目秀麗な女性に無理やり面接を受けさせ付き添いという形で自分も料亭に同行するという逞しさ。

不動産屋にて客室3部屋、保証金2000万、家賃200万の貼り紙を目にすると、すかさず問い合わせてしまう。


終いには近隣に張り紙400枚を貼り出して女の子の取材を直接募集する始末。(これが意外と効果的だったりする)


この辺りから加速度的に集中力が高まり、かなり読み応えがある。


最終的には界隈のカリスマ経営者である「まゆ美ママ」という女性と知り合い、インタビューをする。

彼女はおよそ10年間で13億の純利益を稼ぎ出したという強者。多額の納税を免れるために現金主義で、マンションの隣室を借り上げて、部屋に置き切れない札束を積み上げていたとか。


にしても純利益13億とは、、。



ママによる、儲かるカラクリとはこうだ。


如何に女の子が辞めないように長く働いて貰うか、が肝らしい。

多くの女の子は前借りの借金持ち、つまり「バンス持ち」から始まる。飛田で働くための住宅や、前の店からの借金の肩代わりを済ませていない、いわばマイナスからのスタートがほとんど。
徹底的にマナーを叩き込みます。意にそぐわない子には熾烈な暴力にて教えるそうです。


それぞれの借金返済が終わると女の子は次の道に羽ばたいてしまうので、この間にあらゆる贅沢を教え込む。宝石、ブランドモノや海外旅行。

そして、次なる目標として夢を持たせ、浪費と同時に貯蓄を進めるのです。


夢を持ち、やり甲斐を感じた彼女達は洗脳され、次第に「その店に働くから自分がある」と思うようになります。


ある程度お金が溜まると今度はホスト遊びを覚えさせる。それも一晩の支払いが最低数十万もする一流のホストクラブ。ストレスから浪費を続ける女達の言動を、ホストはママに逐一報告する。

この間にもママは手綱を緩めず、成人式には振袖を着せたり、度重なる高級レストランでの食事やディズニーランドや海外旅行に連れて行くなど飴と鞭を使い分けて、さらなる洗脳を進める。生い立ちが不幸な彼女達は大抵大喜びし、心からママを信頼するという。


結果的に女達は、品とユーモア、テクニック(汗)を兼ね備えた磨きのかかった女性に変身するのだという。しかも、堅気には戻れないという刷り込みまでさせてしまう。

この間、ママの取り分40%が絶え間無く入ってくる仕組みだという。

因みに本人の取り分は50%、やり手ババァには10%。

女の子は中居という性質上、街での客引きが出来ないのでオバちゃんが居ないとお客を得られない。オバちゃんは無論、女の子の収入が鍵となり、お互いに利害が一致する。

女の子は気前良くチップをお裾分けしたり、逆にオバちゃんも女の子の相談に親身に乗ったり缶コーヒーをご馳走したりとチームワークが大切なのだそう。

洗脳された女の子がその後どうなるかという所だけれども、この街での職業的寿命は大層長く、70代でも現役がいらっしゃるそうで、そうでなくとも料亭の経営者となるも、客引きのオバちゃんとして生きて行く事も選択肢として可能性はある。他の街に移るもの、結婚生活を手に入れるもの、故郷へ帰るもの、様々である、と。



ほー、溜息が出ます。



全編に登場する普通ではない女達と、それを取り巻く人々の知恵と強さ。不幸なだけではない、あっけらかんとした人々の根性と温かさ。レトロな街並みに、粋なやり取りに表れる昔ながらの情緒。


僕も、何を夜中にこんな書いているんだろうかよく分からないんだけれど、怖いながらもこの世界に関心を持たずにはいられない。


筆者の思い入れもあり、前半は文体にクセがありますが読んでいくうちに引き込まれます。

何より取材に対する気骨を感じました。

お暇な方はどうぞ。




さいごの色街 飛田

井上理津子


筑摩書房より2000円








怪しく光るピンクの街にいつか行ってみたい。

行けないので(勇気はあるが用事がない)YouTubeで我慢。リンク切の際はご容赦下さいませ。

http://www.youtube.com/watch?v=KKQOamvpyYQ


あー、惹かれるぜ。


僕の関心のある何かが、この街の中に確実に、ある。

寒い夜には

昨日から冷えますね。パラっと雪も見えましたが、三連休もさらに寒いらしいですよ。ううう、、。


寒い夜には温まるモノが欲しくなります。ボクがたまに作るのがこれ。

カブの白味噌汁です。こりゃ簡単で美味いし、何より温まるのです。



カブと湯通しした油揚げを鰹出汁でさっと煮上げて、そこへ白味噌と信州の田舎味噌を8:2の割合で溶きます。カブの葉は色落ちするので煮込まず、別で湯通ししておいて、腕種として盛り付けます。香りにへぎ柚子を上に乗せて。


カブの白い部分は限りなく繊細に柔らかく煮え上がり、ホクホクとトロトロの間の絶妙な食感となります。舌を転がすと、なんとも言えない滋味が広がる。
逆に葉の部分は微かに土の匂いと辛子菜のような爽やかな辛さと爽快感が軽く舌を刺激する。

湯通しされた油揚げはしっかりとした食べ応えを感じさせてくれます。

これを本当の肉、喩えばササミや鴨、白身魚などに決して替えてはいけない。油揚げで充分なのです。しっかり油抜きをすること。

白味噌だけだと甘くて上品過ぎる気がしますが、ここへ少しの信州味噌を補うと、何と不思議な事か!化学反応さながら奥行きのある深い味わいになるのです。

エレガントを、より際立たせるワイルド。

ヘップバーンが撮影の合間に別荘で畑仕事をするような感じのイメージだろうか。

透き通る白い肌を泥だらけにし、満面の笑顔で「私、本当はこっちの方が好きなのよ!」とでも言いそうな。ああ、何と可憐で可愛い事か。


へぎ柚子の香りが食欲中枢をダイレクトに刺激します。




まあそんなことはどうでもいいんだけれど、冬も本番。

もう、恥も外聞もありません。炬燵に入ってドテラを着ながらこの汁を飲んで居ります。

願わくば、炬燵を背負ったまま亀のように移動出来れば、もう怖いものは何もない。




寒いの嫌い。


ハゲ治療その3


何だがバタバタしております。すみません。


もしかしたら向かいのドトールビルの話、進むかもしれません。ダメかも知れません。新年早々、いきなり正念場です(笑)

何か動きがありましたらまたここで。



さて、好評頂いているハゲ病院の話。


遂に禁断の写真アップです(涙)


九月初旬と年明けの後頭部比較。



ああ、遂にアップしてしまった、、。

まず先に、両写真は、かなりの光量のしかも蛍光灯の下で一番苦手な角度で撮られた写真、ということを前提としております。

店では暗いのでそこまで目立ちません。一部違和感を感じる方もいらっしゃるかも。

右の近影は、直前まで帽子を被っており、かなりペシャンコになっています。もっとふんわり作ると、写真よりかなりのヴォリュームがあるということ。これも惜しい。



しかし、それを差し引いても!!


ちょうど丸四ヶ月。かなり生えてるではないか?


「ハゲ」から、もはや「大きめのツムジです」と言い切れるこの変化。

同じ悩みを抱える男性諸君、ハゲはもはや治るのです!

悩んでいる暇があれば病院に行こう。

いざ立ち向かおう、同志たちよ。
もう、逃げも隠れもする事はない。


今こそ革命の狼煙を上げるのだ!!

※※※

体験者個人の感想であり、特定の治療法による効能や効果を保証するものではありません。


写真の著作権は筆者にあります。無断転用及び大量のプリントアウト、年賀状やフライヤー、凡ゆる素材への一切の加工を禁じます。



本日六日月曜日お休み致します

大変急ではありますが、本日六日月曜日、所用によりお休み致します。

ご迷惑をお掛け致しまして申し訳ございません。

どうぞ宜しくお願い致します。


シンスケ

謹賀新年

あけましておめでとうございます。

日本以外の皆さんも、あけましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い致します!


大晦日、紅白のサブちゃんを見たところでタクシーに飛び乗り、しょうじくんと待ち合わせて弊店の入るビルに着くと、日付け変更のタイミングに間に合わず階段の踊り場で新年を迎えてしまいました。

この10年くらい毎年、テレビの前で正座をして12時を迎えていたので、凄く変な気分でした(笑)

喩えが悪いけど、タクシーの中でお産をした妊婦さんの気分。



僕はクリスマスよりも断然お正月ファンなんだけれど、日付けのチェンジが山場なだけに、もう少し味わいたいところなんだけれどなぁ。


そして秒速で着替え。



明治時代の革命思想家の秘密集会のようなビジュアルになってしまいました。ヒゲだけか。割とありかも。

あれに似てる。明治の思想家。




そして誰もいない店内で、越天楽を流してお酌の練習。バカバカしいのを照れずに真面目に取り組むのが我々のライフワーク。

余りにも道路に人気がないので誰も来ないんじゃないかと心配していたのですが、おかげさまで沢山いらして下さって、いい幕開けになりました。

来年もやるぞ!



お客さんが引いてきた頃、全力で酔った男性が一人ご来店。たまにいらっしゃる人なんだけれど、暴言を吐かれ、他の方にも絡むもんで年始早々、ちょっとトラブってしまった。


、、後はご想像にお任せしますけれど。んー、まあ新年早々色んな人がいるなぁ。

でもですね、何だが「腹が立ったんです!」だけではない何かを感じたのです。ある種のサインのようなもの。

営業中のカーテン取り付け放置プレイの時もそうだったけれど、苦言や注意を受けるときってのは必ず何か、僕が傲慢になっている時だということ。

罵倒されるのは好まないけれど、きっと僕に何かの理由があっての事と思っております。全く降って湧いたとは言い切れないのかも。


謙虚で居ることは難しいと、ここ最近強く感じています。謙虚になる事そのものより、出して貰っているサインを感じ取るセンサーが、歳を食って鈍くなってきたように思いますの。

僕は一人でお山の大将なので上司もおらず、注意して貰える事がこのところ更に少なくなってきました。

どうぞ、何かありましたらさりげなくサイン出して下さいね。キャッチ出来るようにセンサー磨いておきます。それが今年の目標ですかね。


そういう目標も、なんか良くないスか?(笑)

なんか謙虚売りみたいで嫌なんですけど、最近お店が楽しくて(前から楽しいけど 笑)本気で長く続けて行きたいと思うのですね。
長く続く為に必要な事をリストに並べたとして、謙虚であることがダントツ一位なんじゃないかなって思うのです。2位以下は同立で、例えば個性的なアプローチとか清潔であるとか、心からのもてなしとか、美意識や主張があるとか当たり前の事が並ぶような気がする。
どれもお金では買えない精神性みたいなものが並び、僕としてはそこが楽しくもありますが。



年の始めに、色々考えられてよかったなとしみじみ思う1月2日の鎌倉行きの車中にて、ダラダラブログを書いてみました。


今年も店もブログもよろしくお願い申し上げます。



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