クリスマスは黒!



もうすぐクリスマスです。早いものです。

今年は週末の制服、何を着ようかなって事で二人で相談する。

去年はタキシードにピンストライプのシャツでした。





もうちょい、シックに行きたいところ。タキシードも、せっかく作ったベストも活かしたい。

で、とにかく真っ黒にすることに決定。


ジャケットとベストは共通で黒、そこへレギュラーシャツ黒ネクタイの組と、ウィングカラーと蝶ネクタイの組と二種類。


最初はネクタイで、クリスマスに近づくと、華やかに蝶ネクタイにチェンジしようという計画。



レギュラーカラーの黒シャツは沢山あるのだけど、ウィングカラーの黒、しかもプリーツ入りとなるとなかなか見つからない。
セミオーダーで大阪の一ヶ月待ちとか、それだと素敵なのだけれど間に合わないし高い。後は業務用のペラっとしたイマイチなやつ。

ネットを検索しまくって上野に現物を見られるお店が一軒だけあり、行ってみることにしました。

上野屋さん。渋過ぎ(笑)




こちらでシャツを購入。結構いい線いっています。

ボタンのデザインや、閉めた時の首周りがキツイので、自分達で少し手を加える事にしました。




この冬は、真っ黒いギャングのボディーガードみたいな装いでお迎え致します。

ツリーとカーテンは12月頭に取り付け予定。

今年はシャンデリアがないのでどう配置しようか。またお菓子でも吊るそうか。




お楽しみに!


自分の悪いところ



自分の悪いところなんて沢山あり過ぎてとてもここには書ききれない。

一つあげるとすれば、他人に対して変に厳しい、というところ。自分には甘いのだけれど。


一昨日、開店前にしょうじくんとアコーディオンのデュオでの練習をしておりました。ロマン座、クリスマスにまたパーティーで弾くお仕事が入ったのです。


彼はまだアコーディオンを始めて40日余り。かなり必死で練習してくれています。

そんな事は百も承知。

出番までひと月、良いものにしたいという想いと、上達が早いので色々慣れてしまって僕がついうっかり、弾き方、、というか音のチョイスについて口を出してしまった。

因みに僕はアコーディオン全く弾けません。(汗)

鍵盤楽器やギターは、同じCメジャーでも何通りも弾き方があります。ドミソなのかソドミなのかミソドなのか。その中にドをいくつ入れるのか、さらに6や9のテンションかけるのかどうか、など。

ルートが重複してるから音が重いよね、みたいなことを言いました。

あれー、静かだな、と思ったら、既に時遅し。(`_´)ゞ



そりゃ腹立つわな。自分の畑の文句は誰にも言われたくないですもん。

僕がクラリネット始めたてだったら、少なくとも黙って見守って欲しい時期ではある。


微妙な距離感で営業を終えて、酔ってた僕は流し台の三角コーナーをガンガン叩きながら掃除をした。

狂った姑みたいに音をしつこく立てた。逆ギレです、はい。

きちんと口で説明しない、モノに当たるなんて本当に格好悪い。昨日見たら金属製の水切りが歪んでいた。



今まで一年半、僕らは喧嘩しい喧嘩はほとんどなく、店でも割と語りながら運営してきただけに、自分としてはどうしていいのかわからず。

怖かった(笑)


そいで翌日、きちんと謝りましたよ、、。


彼も謝ってくれました。いやいや、完全に僕が悪いのだけれど。




40歳近くもなり、性格が激変することはないんだろうと思う。

これでも普段から最大限に気をつけていて、うっかりポロッと出てしまったんだもの。

「これを機に性格、治します!」なんて言い切れる方が、寧ろ怪しい。

それより、言ったことをきちんと認識して、スッパリ謝れるかどうか、に重点をおいてやっていこう。僕が親方であっても。

開き直りではないですよ。




よりフェアに語り合える良好な職場環境目指して。

狭い店だけど大きな問題であります。

東京に戻りました



昨日は二日酔いのまま、夕方の新幹線で一路東京へ。

お店に入り、営業を終えて天井のランタン撤去。

んー、やっぱ自分の店が一番落ち着きます。20年暮らした実家よりも、たった10年のお店の安心感。

昨日京都で泊まった宿で夜中に一人、信じられないくらい淋しくなってしまった。来年40なのに、、(笑)

旅先でもどこでも、いつも全然平気なんです。こんな気分味わったことない。

この変化はなんなんだろう。昔は実家という存在が、まるで安定剤みたいに心の奥底に担保されていたのに、今はすっかり逆転してしまった。


こういうのを含む加齢、なんですかね、そろそろ受け入れないといけないのか。ちと淋しいけど。

午前三時半、就寝。

玄関のチャイムで目覚めて、宅急便を受け取る。母からだった。



中を開けると、、





西京漬け!しかも二枚(笑)



さすがに芸の細かな京女、天晴れです。

この辺りのキメ細やかさは僕はまだまだ勝てない。休みの日に焼いて食おう。剣菱の熱燗が合いそう。



昨日新幹線乗り場で慌てて買ってきた漬物をザクザク切って口に放り込む。残りは男所帯の強い味方、コンテナへ。



旨い。心に沁みる。また落ち着いたら帰省しようっと。





さて、三連休も張り切って営業致します。どうぞご贔屓に!



実家にて



昨日、新幹線で京都駅からそのまま二条城まで乗り継いで両親と待ち合わせ。なんでも家で食べるより馴染みの寿司屋に行こうとの事、、、。西京焼き、リクエストしたのに。


いつもの寿司屋で近況報告。僕は相変わらず自分の話はあまりしない。店とは違って僕は親父とお袋の話をうんうん、とひたすら聴く。

寿司、というか生魚は胃腸炎以来。怖くて食べられなかったんどけど。

しかし、これがなかなか旨い!




この後、親父の奢りとわかると慌てて松茸の土瓶蒸しを頼む。

ひれ酒を飲みながら懐かしい子供の頃の話に花が咲く。大人になるっていいもんですねぇ。


ほろ酔いでタクシーにて実家に帰る。その足で僕だけ近所の銭湯に。



昭和初期からやってるこの銭湯、何も変わってない。ただ、お客が誰も居ない。やはり時の流れは仕方ないのか。

2時間ほどダラダラ過ごして再び実家の二階。子供部屋はすっかり改装されており、思い出のかけらもない。



少しだけ残された僕の荷物の中に、中学卒業の時の寄せ書きが見つかる。

また話が盛り上がる。大槻さんという人からの緑の字の寄せ書き「男の先輩にしては話しやすかった」くだりは誰も触れない。





母親と10数年ぶりに布団を並べて就寝に着く。照れるなぁ。(≧∇≦)

緊張しながら会話。んー、何でこんなに緊張するんだろうか。


何話したかあんまり覚えてない。そのくらい緊張した。






翌朝、早い時間から両親とドライブ。泉涌寺境内に向かって車を進める。

ここは二人が出会ったお茶の稽古場のあるお寺なのです。僕のリクエスト。

思い出の地に、昔と変わらず仲睦まじいお二人。まんまと僕の思惑通り。よかったねー。





その後は清水寺近くの祖父母のお墓参りや、懐かしいお店を訪ねて、一時解散。この後は両親には言えない用事があるのだ。

足早に祇園へ。舞妓さん御用達の幾岡屋さんにて、正月用のかんざしを買いに。これだけは両親には付き合ってもらえない。親子たりとも分かり合えない世界なのだ。



迷ったけど、よくある菊のモチーフのにした。

次回は芸妓ではなく、女給。色街っぽい江戸風や伝統的なのではなく、大正ロマン的な当時の普段使いぽいのを探していたので割と満足。



「ご自宅用ですか?」

「あー、はい。え?」


(何でわかったの?)


店員さんは特に気にする様子もなく。さすがは色街!


先斗町を歩く。何度も歩いているのに今日は特に異国情緒が色濃い。



酔ってるせいで東華菜館の塔がヴェネチアに見えてくる。いつかレトロ探訪に書いたエレベーターのある中華レストラン。今日はパス。




そして、近くの喫茶店フランソワにて休憩。ここもヴェネチアの続きだという設定にしておこう。



この、昭和9年から続くギャグみたいな店内でクラシックを聞きながらかんざしを眺め、ブログを書く。悲しいくらいに落ち着くわ。





さて、この後はどうしようかな。


追記

その後、かんざしモードに突入。20軒くらい覗いて、櫛も買いました、、。

お店の人に鼈甲の色を合わせるために見せたりしながら。もはや恥ずかしくなくなってる自分にハタと気付き、しばし落ち込む。




ああ、京都らしいといえばそうなんだけど。何やってんだろうか。





新幹線でのお楽しみ



新幹線大好き!普段会話していて「出張でまた新幹線だよ、ウンザリ」なんて言われると悲しくなります。どうしたら飽きるのか。

飛行機だとその二乗くらい理解できません。飛行機ウンザリ、その言葉言ってみたいですな。


駅弁屋で物色していましたらつい真剣になり過ぎて、一本乗り過ごしてしまいました!(笑)

お土産は大切です。




今日買い込んだのは崎陽軒のシウマイ四箱、山葵漬け一箱。(いずれも両親の好み)

そして電源確保。いわばへその緒です。充電開始!




さて、先ずは新幹線が発車するまでテトリス。ワンゲームを軽くこなしてから、ネットのチェック。いつもの昭和風俗関連のものから、お馴染みのBARの店主のものまで。

そして進行方向右側の景色を見る。品川から先、新しい建物は建っていないか。赤亦(あかまた)電気製作所も、東京音楽学校もしっかりチェック。

新横浜手前のボロい雑居ビルも見逃せない。


景色に飽きたらドア上部の文字ニュース。


えー!!高倉健さん逝ったか、、、。

当たり前にずっと居ると思っている人が逝くと余計に悲しい。


僕の中ではケンさんはその一人で、なんとなくではあるけれども日本の古き良き男性像の要として、心の片隅に存在していた。

ケンさん、裕次郎、松田優作、、それぞれ個性がある。華やかな昭和の時代を彩ったスターには間違いない。


今は誰がいるんだろうか。

「自分、不器用なんで、、、」と呟いてみる。んー、ケンさんにはなれない。


せめて酒を、、、

買っておいた缶チューハイ。ツマミは、、、忘れた。


(´・_・`)



あーあ、お土産開けちゃった。両親に買った四箱が三箱に。

匂いはテロ並み。気にしない。なぜなら横はうるさい子連れのお母さんだから。三人掛けを向かい合わせて6席を二人で使っている。





昔三箱一人で食べたことあります。もうしません。

臭いシウマイをアテにグビグビ飲みながらオペラを聴く。今日はフランスのホフマン物語。変に酔いの回りが早い。

気持ちいいなぁ。

あー、そういや今日の富士山、キレイに見えるだろうか。

ダサいフレンチのメニューを考えてみた




暇なので、なるべくありそうなダサいフレンチのコースメニューを考えてみた。


設定は料理自慢の勘違い夫婦が脱サラして伊豆辺りで営むダサいオーベルジュ。

料理の盛り付けを無視したド派手な花柄のお皿、手作り刺繍のランチョンマット、、、。


腹が立つ臭いフレーズ、自然の尊さをしつこくアピールした謳い文句、謎の無農薬野菜やらハーブ推しなど。



というか、普段からこういう無駄な事ばっかり考えて、勝手にイライラしたりしています。

不毛だわ。



以下、創作です。






伊豆高原 森のオーベルジュ
「妖精の詩」

シェフお勧め 秋のフレンチコース

(コース注文のみ、アラカルトはございません)



メニュー



食前酒

自家製無農薬レモンによる本格リモンチェッロ

爽やかな舞台の幕開け



前菜

シェフからの小さな贈り物 天使のアミューズブーシュ

これから始まる幸せの物語の前に




スープ

茸と栗の軽く泡立てたプチポタージュ 森の妖精風

伊豆高原からの秋の便り



お魚料理


雄大な伊豆の海が育んだ平目と天然鯛のソテープロヴァンス風 軽いバターと爽やかなエンダイヴの香りと共に

遥かエクスアンプロヴァンスの太陽の輝き




お肉料理

レースのような網脂で包んだ伊豆牛フィレ肉の魔法のグリエ 真っ赤な森の恵み 無農薬リンゴソースを添えて
シェフの気まぐれ、陽気な皮付きホクホクお芋の付け合わせと共に


お口直しに

小さな小さなソルベ 三種類の柑橘のハーモニー 銀のスプーンの魔法のいたずら


サラダ

ルイーズおばさんの無農薬ハーブサラダ 爽やかなローズマリー香る地中海産ヴァージンオイルドレッシングもしくはヒマラヤ岩塩と有機レモン果汁で

高原のハーブ園のそよ風を頬に受けて



デザート

今日の幸福な物語の締めくくり、甘い三重唱をあなたへ


パティシエお勧めフレッシュベリーのタルト 秋の森のざわめきを閉じ込めて

自家製アイスクリーム 大地からの贈り物、濃厚なヴァニラの抱擁

朝摘み雫きらめくストロベリー 高原のいたずらっ子



コーヒー、自家製ハーブティー各種





あー、なんかフレンチ食いたくなってきた。

ってか、ルイーズおばさんって誰?



早く寝なきゃ。(´・_・`)






明日から帰省します



今日働いたら明日から2泊で京都です。暫くゆっくりさせて貰いますね。

田舎者なので、未だに新幹線乗るのが楽しみです。駅弁何にしようかね。ビール飲んじゃおかな。富士山キレイに見えるかな、、、。



久しぶりの実家なんですよ。もう一年半くらい帰ってなかったですから。出来る限りの親孝行してきます!

溶けそうなレトロな店もUP出来たらと思います。

お店は休まずしょうじくんが頑張ってくれます。





そうそう、携帯カメラについてその後も考えておりました。何が正しいのか。


マナーはちょっと横において置いて、撮ってもらえるということは、有難い事なのかもしれません。少なくとも見てもらうような行為(人前で楽器を弾くという)をしているのだから。


教皇の移動専用車両、大変なことになっています!

こりゃカメラで撮った撮られた以前の、スケルトンなデザイン。




教皇と僕とは立場が天と地ほど違うけど、なるほど。人を導く人も大道芸人も、衆人環視に晒される職業なんですな。

パパモービルというらしいです。天晴れ!




ギックリ腰を乗り越えて。





僕ではなくてしょうじくん。


土曜の出勤前に家でギックリ腰になったんですって!かわいそうに。


ギックリさん、時間が経つに連れ、どんどん痛みがひどくなるようで動きがノロノロしてきました。お店はともかく、この日は上の階のパーティーでアコーディオンを弾く予定がありまして、それが大変。

このアコーディオンは13キロくらいあるんですね。重心が前でかなり不安定、腰と背中で支える。

アコーディオン弾きのギックリ腰というのは、即ち死を意味します。



それでも3ステージ、座奏にて頑張ってくれました!痛みのあまりに表情が厳しい。





この後しょうじくん、見事に討ち死になさいまして、早退。健ちゃんに助っ人を頼む。

しかし、素晴らしいパーティーでした。温かくて笑顔に溢れてて、飾らない華やかさ。演奏という形で参加出来るのは音楽やってて良かったなとつくづく思います。


でも、、お客さんのする事なのであまりどうこうは言えないのだけれど、演奏始めた瞬間、多くの方が反射的に携帯のカメラで撮るのね。しかもムービー。

こちらはまな板の上の鯉なので、もちろん腹は決まっているんだけれど、何というか、ズラッとカメラが並ぶのはどうも色気がない。

握手を求めて手を伸ばしたら、相手は手袋をしていた。そんな風に感じるのは僕だけかしら。

いつ頃から、こんな風になったんだろう?


機械の目に囲まれるより、生きた瞳に囲まれる方が表情があり、演奏しているこちらとしては気持ちが良いんだけれど、、、。

僕はコンサートではなく、酒場のBGMという表現に関心があるのです。お話の中に溶け込めるような自然な音楽の在り方。

今後はそういうアプローチも工夫しないといけないんだけど。

時代の流れは仕方ない、のか。




写真は僕のお気に入り、ローマ教皇のお出ましシーン。







おしまい。

グッドエイジングレザー



僕は革の製品が大好きです。

おこずかいでモノが買えるようになった高校生の昔から、革の製品を買うようになりました。

ルーズリーフを留めるノートも、流行り出したシステム手帳も全部レザー。嬉しくて仕方ありませんでした。

時は流れて、ノートも手帳も電子化してしまいましたが、レザーのチョイスは今も変わりません。

好きな色は明るいブラウン。オレンジからコニャック辺りの色が、経年変化も長く楽しめます。

特に流行もなく、どちらかというと頭が良さそうに見えたりする。汚れても目立たないし、年季は寧ろ味になる。


ちょっとカウンターに広げてみました。




うわー、茶色い。落ち着く。婆さんが作った弁当のおかずみたいな色だ。


たまに行ったカフェなんかでテーブルにさりげなく重ねて置いたりしています。さりげなくないし、誰も見ていないけど。
(´・_・`)

携帯はiPhoneを2台使っています。左のは石川県の女性作家の革のケース。手縫いです。右は栃木の職人さんの製品。

時計のベルトは大阪の松重商店。牛革にワニのプレスが型押ししてありまして、手縫いだそうです。買う時はいつも三本くらいまとめて。

iPadも石川県の女性作家さんのもの。ペンケースもこれまた国産のどこかのです。

奥の財布は東京の職人さんの手縫い。イタリアのトスカーナの革で作っています。手前のオレンジのはエルメス。領収書専用です。使いすぎて色が茶色になってしまいました。


みんな手によく馴染み、くったり柔らかく、どれも優しい手触りです。


シワもシミも汚れも味のうち。汗と油でツヤツヤしております。



僕もそんなオッサンになりたい。




虫の知らせ



今日はお休み。

何だかバタバタしていたので、ついウトウトしてしまい、二時間くらい居眠りしてしまった。


そこで、とてもリアルな夢を見た。


夕暮れ時、懐かしい感じに騒ついた商店街。お豆腐やさんのラッパが聞こえる。


僕は小学校高学年の頃に戻っていて、半ズボンをはいている。そしてなぜか店をやっている。

内装は今と同じ。でもメニューは全てジュース。よく見ると椅子の背が低い。

下手くそなヴァイオリンを練習して、今日もお客さんに楽しんで貰わなきゃ、と、開店前にヴァイオリンを調整していると、弓が二つに折れる。


お母さんに何かあったととっさに気づき、自転車で近くの実家へ戻る。


布団が敷かれ、そこには母が横たわる。ドラマみたいな臨終のシーン。親父は奥の居間にいて顔が見えない。

お医者さんが既に脈を取り、カルテに何か書き込んでいた。

横には大人の今の僕がワンワン泣きながら、「死なないで!」と泣いている。大人の僕はずっと大きくて、髭が生えていた。

僕も駆け寄り、お母さんのそばによる。
大人の僕が半ズボンの僕に怒鳴る。

「遅いやんけ、仕事なんかどうでもいいやろ!みんな待ってたんやで!」

不思議だったけど、ああ、もう一人自分がいるなとすぐに分かった。というより悲し過ぎて、そんなことどうでもよかった。

お母さんは朦朧とした意識の中で、大きな僕と小学生の僕との手を握り、分け隔てなく「あなた達のお陰で最高の人生を送れた。もう少し見守りたかったけどもう時間が無いわ、、」という内容の事を言った。

僕らはもう訳がわからなくて半狂乱になり、涙でぐしゃぐしゃになったオデコをガシガシぶつけ合ったり殴り合ったり、無理やり笑いながら悲しみをやり過ごす。

僕らは妙に同じ動きだった。そりゃ僕が二人居るんだからそうなのか。


お母さんはそれを見ながら余計に安心したように笑うと「ありがとう」とつぶやき、そのまま静かに逝ってしまった。


僕らは(小学生と大人の僕と二人)抱き合いながら、ビービー泣く。

悲しくて、好きなのにもう2度と会えなくて、どうしたらいいんだろうか。



落ち着いてから、色んな話をしながら、お母さんが死んだ悲しみを二人で分かち合った。とても長い時間、声をあげて泣いた。

取り止めもなく始まるお互いの話。お母さんの思い出から始まり、キヌギヌがどうしたとか、飼ってた猫の話やら、英語を習っている話とか、無くしたラジコンの話とか。

本当は悲しくてやりきれないんだけど。


大人の僕が、「よし、酒飲むぞ」といって冷蔵庫へと向かう。僕も飲みたい気分だった。


しばらくして、あれ?戻って来ないなと台所を見ると、大人の僕が、再度冷蔵庫の前で声もなく泣き崩れている。

僕も行ってみると、冷蔵庫の中に焼いた銀ダラの西京焼きが二皿、ラップに包まれている。紛れもなく僕らの大好物だ。

それも大きい方と小さな方があり、それぞれに弱々しい字でメモが貼ってある。


「大きい晋輔、体壊さないようにお仕事頑張ってね。いつもありがとう」

「小さな晋輔、イジメなんか気にしないこと、クラブ頑張りなさいね」

(当時、僕はイジメられて居りました)




また二人、抱き合って泣き崩れる。




、、、さて、ここで目が覚めた。



現実の僕も、もちろん泣いています。(笑)




そして、噛みしめる現実の充実感。おお、まだ母親は生きてる。親孝行も出来るし、そしてまた銀ダラの西京焼き食べられるじゃん。

ていうか、前回帰省した時に友達と約束あるからと西京焼きを突っぱねて出かけてしまった事を思い出す。


バカ!俺のバカ!


というわけで、来週の火曜日と水曜日、実家に帰って参ります。今決めました。


あー、お母さん。あまり会ってないけど今でも大好きですよ。知ってますよ。


西京焼き、大人と子供のと二人分焼いてもらおう。


夢はヤバい。




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芝桜〈上〉 (新潮文庫) (JUGEMレビュー »)
有吉 佐和子
我らが有吉佐和子先生の長編。戦前の花柳界を舞台に、二人の女が艶やかに力強く生き抜く。温厚で情緒的な梅弥、狡猾で気ままな蔦代。共に授かった類い稀な美貌を武器に、ただひたすら戦前、戦後の花柳界を生きる。花柳界独特のお茶屋の仕組みや旦那制度、一本や水揚げなど、判りにくい独自の世界がこの一冊でよくわかる。ストーリを彩る、旦那からの贈り物の三越謹製三百円の帯や、大粒の翡翠の簪、英国土産の巨大ダイヤモンドなど、随所に登場する豪華絢爛な衣裳拵えと、それを取り巻く年増女将との丁々発止のやりとりの描写は必見。店主のバイブルと同時に、不動の一位たる女流文芸作品。

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書いた記事数:1517 最後に更新した日:2024/03/25

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