マトンに立ち向かう





食い物カテゴリーのタイトルは大抵「向かい合う」なのですが、今回は違います。

マトンという大きな大きなトラウマに立ち向かう回なのです。



北海道にお邪魔して、早1週間。どうしてもあのサッポロビール園で頂いたラムの味が忘れられないのです。






豚肉と牛肉の間のような、それでいて濃い独特の風味。牛肉豚肉が満たしてくれなかった奥行きが、ラムにはありました。

今まで届かなかった味覚の奥の方を優しく撫でられたような、半端ない充実感。


もう一度あの充実感を味わいたい。

これが、もしもマトンならどうなんだろうか。味覚の奥をグリグリやられたら、それこそ今まで知らなかった幸せが待っているんじゃないか。


元々癖のある食べ物が大好きで、チーズやくさや、発酵食品の類は普段から好んで食べております。

食品で嫌いなものは今のところマトンとホヤくらい。ホヤも新鮮ならまあ、全然行ける位の所なんだけど、登場回数からして低いのでこれは無視してもいいレベル。

北海道出身の人に話を聞くと、大抵の人が抵抗なく食べてるジンギスカン。つまりはマトンなんだけど、どうして臭いモノに目がない僕だけが苦手なんだろうか。


人生を損してるような気がして、段々腹が立ってくる。

小さい頃から母は僕に繰り返し言いました。

「ジンギスカン(主にマトンを指す)なんて臭くて食べられへんよ。あんなん食べる位なら、、、」と、羊の話になるたびに。


親の言葉ってのは不思議なもので、離れてからもどんどん成長していく。

へー、そんなものかな、位から段々とそうに違いない、遂には確信へとなる。



差別思想なんかもきっと同じだと思うのです。本人がいくら自立した思想を持ってしても、例えば「保毛尾田保毛男って気持ち悪いわねぇ」とか、「あの橋の向こう行ったらあかんで」なんて100万回くらい繰り返し言われたら、大人になっても中々抜けないと思う。

(幸いに、うちの親はその類の言葉は一切言わなかった)



母よ、僕は遂にマトンに立ち向かいます。




用意したのはなるべく大人向けな顔色の冷凍マトン1キロ。





わー、かなり匂いがあります。ドキドキしてきました。


タッパーに移して、暫し眺めます。





何でか、心臓がバクバクしてきました。

凄く変な例えなんだけど、僕にとってマトンを克服することは、女性と性行為を出来るようになるのと似ている気がする。



今まで長年に渡り、強く否定してきたものが壊れる恐怖感。人は急な変化が一番怖いのです。


今から女性に関心を持ったら、、生物学的にはいい事なんだろうけど、なんさ色々ややこしくなる。いや、ややこしいのが嫌なのではなく、自分のアイデンティティが崩壊することが怖くて仕方ないんだろう。


嫌いなものの1つくらいあっても、それはそれでカッコいいのかも、なんて思い始める。

そんな事をモヤモヤ考えてるとフライパンから煙が上がってきた。ヤバイ、明らかに考えすぎ。でもなんでこんなに緊張するんだろう。



匂い対策として窓全開で換気扇は強スイッチ、そして僕は短パン一枚です。


とにかく焼いてみよう。






くっさ!!!


確実にアカンやつや、これ。中東の本格的なワキガの方のような匂い、、。


でも、嗅覚と味覚は違うって言うし、、


一口食べてみよう。死にはしない。





えいっ!



ヒー、臭い。どうやっても臭い。大嫌いな匂い。


でも、、ここまで来たらもう同じなのだから、10口連続で食ったらどうなるのか。大雨で傘がなくて全身ズブ濡れで、段々どうでも良くなって、逆に楽しくなってくるのとちょっと似てる。

10口食べても臭かった。


よし、次はニンニク作戦。巻いて食べよう。





にんにくを巻くと、臭さのベクトルが少し変わってきた。ワキガ には違いないんだけど、人間由来ではなくハーブの類の香りのような気がしてくる。

まるで、トルコの後宮のハーレムに集まるダンサー達の汗の匂いが、お香と混ざったみたいだ。うむ、これなら耐えられる。


いざトプカプのハーレムへ!!




段々、ニンニクを食べてるのかマトンを食べてるのか分からなくなってきた。





と、ここで休憩。



お風呂を沸かしてあるので飛び込む。


湯上りには牛乳。臭い消しといえばこれ。





調べてみると、基本的なお店で出されるマトンは一人前150グラムらしい。僕が食べたのは300グラム、致死量の2倍も食べてしまった!!



マトンはまだ僕には早かったかも、です。でも、今回の件を踏まえて確実にラム(一歳未満)はオッケー、マトンの高級なやつも高確率で行けそうです。


でも、いくら美味しくても東京じゃあの興奮は得られないと、、、。旅先の、それも初めての北海道の空気がより美味しく感じさせたんでしょうね。



あの鍋も造形的に好きかも。






ラムは東京で美味しいお店を探して行ってみるとして、マトンに関してはまたいつか北海道に行った時に試してみよう。



それまで待っててな!







トラウマに挑戦するのは人生の節目の答え合わせにも似ています。何せ、自分の内なる神秘ほど近くて遠い存在は他に思い付きません。


僕の他のトラウマは、と。



新鮮でないホヤを食べる

生卵の白いカラザを単独で食べる

黒板を勢いよく爪で引っ掻く

小学校の球技大会に出場する
ゴキブリを素手で触る

オタク口調の声優さんの詰まんなそうなアニメを一話丸々鑑賞する

友達の飼い犬に顔を舐めまわされても、一切拭かずに動じないフリをして話を続ける

伊勢丹メンズ館の三階奥の長身の気取った店員さんと軽やかに世間話をする

確定申告を全部自分でやる
カラオケでラップ主体の曲を唄う
女体の神秘に挑む



まだまだ沢山ありました(笑)





本日お休みとさせていただきます




本日、日曜日ですが台風接近により臨時休業とさせていただきます。僅か四時間だけの営業なのにゴメンなさい。家で選挙報道でも見守りましょう(笑)


僕は昨日、期日前投票して来ました。この天気では流石に、、。



明日の月曜日の通勤時間には最接近するそうです。お勤めのみなさんはくれぐれもお気を付け下さいませ。



あと、私事ですが携帯電話を店に起き忘れた。お急ぎの方はSNS系のダイレクトメッセージまでお願いします。


また火曜日からどうぞお待ちしております。


店主



小樽2日目 ウニ丼とマッサンの故郷




今日は朝7時に起きてお散歩。こちらは寒いですが快晴です。


駅のそばにある三角市場。ここは細長い通りの中に20件くらいの魚介屋さんがひしめき合っております。





中々シブい市場ですこと。





タラバ蟹が並んでますが、値札はなし。どこも一杯からの注文のみ。足一本とかだけで十分なんだけど。





小さな手のひら位ので8,500円だったので、大きなのは多分数万円になると思います、、。


カニは諦めて、似てるのでシャコで代用します(笑)



ついでにボタンエビも。シャコ三匹で千円と、まあまあ。


卵がギッシリ入っています。





旨い!!!

ボタンエビは普通に美味しかったですけど、シャコの方が美味しかったですね。


ビールと合います。またサッポロクラシックビール。





そして、、、、念願のウニ丼。


奮発して、4,500円一本勝負です。キタムラサキは入荷がなく、バフンウニのみ。


いつも思うんですけど、なんでバフンなんて名前にしたんだろか。もっと適当な食欲をそそる名前にしたらいいのに。


なんて文句を言いながら待ってると、出てきました、、




橋で掬ってみる。





素早く掻き込む。なんて贅沢なんだろう。






そりゃ、もう、美味しいんですけど。


でもね、ミョウバンを使ってないので、物凄くプレーン。本来ならばこれが高級な証拠なんだけど、ミョウバン慣れしている僕には味がしないのです、、。少しパンチに欠けると言うか、、。


安物を食べ慣れた僕にとっては、まるで卵かけご飯のようにプレーンなウニ丼なのです。そう、卵かけご飯そっくりな味!


もっと安くてミョウバン臭い、叩き上げのワイルドなウニ丼は東京で頂くとしよう。 貧乏性でケチなので、本場のウニまで文句を言う始末。不幸な話です。





さて、朝飯が終わったら今度は余市に行く。小樽から余市は三駅の近さ。海沿いに西側に行くとあります。


駅前は日本中にありそうな過疎の地方都市、って感じなんだけど、駅の向かいにスコットランドの古城のような門がそびえ立ちます。





向かいはパチンコ屋なんですけどね、、(汗)


中に入ると、更にスコットランド!これは来て良かったです。白樺とか生えてますし。









実際に火入れなどしています。





石炭の匂いが懐かしいです。子供の頃に尋ねたSL博物館と同じ匂い。


マッサンとエリーのお住まいなども移築されています。





こんな可愛いアーチのついた小さなお家。マッサンとエリーは国籍を超え、ここで愛し合い暮らしたのか。

素敵な場所だな。





あれ、っとよく見るとなんと、玄関にある傘立てがキヌギヌとお揃いでした!!




「エリー、傘立て買って来たぞ!」


「マッサン、キヌギヌトオソロヤナヰカ!ワタシウレシ!」





って、んなわけ無いよね。カリモクの戦後大量生産のやつだもん。




その後は貯蔵庫を見たり、製法を勉強したりしました。



そして、早足で向かったのはウイスキー博物館。


中でも、昔のボトルなんかを保存展示しているコーナーは垂涎モノ。可愛いラベルの昔のボトル、持って帰りたかった。


ニッカ第一号ウイヰスキー。ボトルが超可愛い!





ウイスキーを貯蔵している数年の間、経営を支えるために余市で収穫したりんごを使ってりんごジュースを作っていたんですって。





そして、大日本果汁株式会社、略して日果、ニッカ、となったそうです。



注目は、アップルワイン。何とアップル感のあるボトルですこと。僕は恥ずかしながらアップルワインというのを知りませんでした。


アップルワインはりんごジュースからアップルワイン、アップルブランデーを作り、シェリー樽で寝かせたお酒だそう。昭和13年から続くロングセラーだとか。





こちらはポケットボトル。ヤフオクで出てないかなぁ。





試飲会場では、アップルワインとスーパーニッカ、竹鶴の三種がタダで飲めます。ここは入場料もタダ、何とお財布に優しい観光地なのでしょうか。


その代わり、タダに興奮して走り回るオバハンと大陸の方でごった返しています。

特にオバハンは皆んなウイスキーを残してる。マッサン見たら泣くぞ。








ウイスキー二種も素晴らしかったのですが、特にこのアップルワイン、とても気に入りました。



無料試飲コーナーの隣の建物は、恐怖のお土産コーナーとなっております。

なるほどね、ここで一気に回収するのね、、。 今でも発売以来、ほぼ同じパッケージだそう。現地でも売ってたんだけど、、





重くて割りそうなので東京の酒屋の担当者さんにLINEを送り、見積もりの金額がお土産コーナーよりかなり安いことを確認して、その場で発注(笑)

明日からメニューに加わります!


お湯割にしてシナモンスティックを刺して出したら美味しそうだな。冬にいいかも。





マッサン、新メニューをありがとう!!







余市まで来てウイスキーじゃないけど(笑)


さて、これから再び札幌に出まして、最終夜の今夜は炉端焼きです。

もう、胃がパンクしそうな毎日なのですが、本場のホッケとトウモロコシを食べなくては東京に帰れません。


今まで食べた北海道食材リスト


サッポロビール
ジンギスカン
タラバ、ズワイ
生うに
子持ちしゃこ
ルタオのチーズケーキ



あー、まだ石狩鍋とかちゃんちゃん焼きとか、乳製品類に昆布、松前漬けに貝類、夕張メロン、イクラに北海道ラーメン、、。


全然ペースが間に合わないのに、夜中にホテルでどん兵衛とか食べてしまいました。バカバカバカバカ!!





こんなにも美味しいものが集まっている都道府県、北海道以外に他にあるでしょうか?!



ビバ、北海道。まだ明日の昼まで時間はあります。





小樽1日目 ジンギスカン攻略




2年前にいまの物件に引っ越した時に切りまくったカードのマイルが、今頃になって恐ろしいスピードで期限を迎えています。



降り立ったのは新千歳空港。ここから札幌に入りました。発の北海道上陸です。


すぐに尋ねたのが、中央通り公園。「テレビと同じだ!!」と感動もひとしお(笑)






既にこちらは紅葉のピークを迎えております。





そして、タクシーにて札幌ビール園というところに向かう。







こちらはサッポロビールの工場で、現役で稼働しとります。その中にバーベキュー屋さんがあり、とてもセンスが良いらしいとの事。


が、、着いてみると、ジンギスカン専門店だったのです、、。





僕は全く、ジンギスカンが食べられない。2回ほど試して見たんだけど、2日くらい口の周りにワキガの匂いが残り(失礼)吐いてしまった。


その位苦手なのです。


だがしかし、天板はあの形のが一枚のみ。「本当に美味しいので試してみて」と言われるまま、腹を決める。


まずは、大好物のカニ二種で気持ちを整える。タラバとズワイ、まさに天国のチョイスです。







地獄の前に、責めて良い思い出を。お魚も行きます。





好きなもので腹を膨らませておき、後半の羊ガスに耐えさえすればここから出られる。牛肉も匂いが付くので何も食べられないけど、1秒でも早くここから出たい。


そしてとうとう、その時が来てしまった。






わー、苦手だなぁ。焼きさえしなければまだ見てられるけど、、臭い脂が加熱されて室内に拡散して、、。オェェ。





あー、恐れていた絵が目の当たりに。


ここまで来たら食べてみよう、と口に放り込む。


名物、サッポロビールで流し込む!





あれ、何だか香ばしくて美味いぞ!!


これは美味い。濃い牛肉の味というか、ハーブのような香り。ハラミより上品で、香木を焚いてるような香りが鼻を抜ける。







二回も追加してしまった、、、。また食べたい、というか大好物の域。


後で調べたんだけど、ミルクで育った子羊を、そのまま穀物で育てるんだそう。牧草を少ししか与えないので匂いがないんだとか。


東京でも少し、空輸しているお店があるとかで、調べてみよう。ううん、サッポロの奇跡としてこのままそっと蓋をしていた方が良いのかも、、。






札幌ビールを後にし、小樽へと向かいます。電車で30分のレトロな街並み。

それも、今でも現役で経済の中心、というよりも、過去の繁栄を経て少し落ち着いたような雰囲気なのです。

小樽は前から目を付けていました、、。











小樽は明治期に北海道全土から採れる石炭の出荷拠点、外国貿易の拠点、そしてニシン漁の好景気にあったそうで、想像を絶する経済活動により、かつてない繁栄を迎えていたそうです。



ニシンひとつ取っても、ある網元さん一件の年商が250億たったとか、、。ブッ飛んでますな。

そんな訳で、為替取引とも連動し、街中には銀行や保険、証券の為の大きな建物がバンバン建てられ、今も残ります。


既に駅が立派なのですもの。





夕方4時に着いて、少し散策。運河沿いの激安ホテルを取ったので、そこを拠点に古い町並みを歩く。


夜に備えて海鮮丼をチェックし、胃を拡げて備える。


僕が食べたいのはこういう下品なくらい大盛りのウニ丼です。ウニの土石流というべき、大盛りのやつ。勿論新鮮で味もよく、香りも見た目もいいやつしか食べたくない。8,000位までなら出してもいいと思ってる。








間違ってもこんなの食べたくない。これなら店内で暴れる。(観光地なのでたまにあるらしい、、)




チェックを終えて午後5時。少し疲れたので横になったが最後、、。



窓がオレンジ色になってる。あれ、夕焼け?





ギャー!13時間も寝てしまった(笑)


伴侶はカップラーメン食いながら缶チューハイ飲んで待ってたみたいです、、。御免なさい。


13時間も寝てしまった、、。ジンギスカンを消化するのに体力が必要だったのか、、とにかく深い熟睡をありがとう、北海道よ!!



というわけで、朝ごはんにウニ丼食べて参ります。10時なので出かけるとしよう。



水曜8時よりお店は再開となります。どうぞよろしくお願いします。





話に聞いた「変な店」





世の中には沢山の変な店があります。想像を絶するユニークなお店に、こだわり過ぎてお店の程をなさない店など、話では沢山聞いた事があります。


聞くたびに、ウチは普通だなーって痛感します。まあ、凡人がやる事だからそれが自然なのだけれど。


聞くのは良いんだけど、どんどん忘れていってしまうので、今後覚え書きとして書いてみます。

実際に行ってないので、(既にない店多数)細かいソースなどはお許しください。



***


オネエが入店管理する謎の美容室バー


芦屋の高級住宅地の山の奥に佇む閉ざされた美容室。オーナーは明らかに公家の出身と判るご苗字の男性で、元モデル。死ぬほど格好いいらしい。

お昼は美容室をなさり、夜は友人が屯してバーのようになったのを機に、超会員制バーとなった。


夜な夜な集まるお客さんは皆さん個性的で、底抜けにセンスの良い人達が毎晩集っていたそうです。


噂が噂を呼び、お金持ちや芸能界まで、その店や彼を一目見たくて目指すんだけど、名家出身の美しいオネエはお金に困ってなく、意地悪なので、ミーハーな人たちを一切受け入れない。



時はバブル期。裕福そうなOLさんと思しき女性3人組が「入れますかね、、?」とドア越しに尋ねる。

「じゃ、何か面白い事やって。」


えー、何それー、出来ないしー、ダメですかー?と言った瞬間、ドアが閉まる。それ以降ニ度と開かない。(笑)



ある日、ハーレーにて乗りつけたカップルがご来店。

大きなバイクの横にはサイドカーが付いていて、飛び切り美しい女性が澄まし顔で座っていた。







オーナーはいつも通り「じゃ、あんた面白い事やって。」と女性を指名。


その女性は立ち上がり、履いていた網タイツを手で破り、その千切れた両端を固く結ぶ。

女性はそのまま店の前を全力疾走し、タイツが絡まって転ぶ。また立ち上がり、また転ぶ。サングラスが外れ、シャネルスーツが泥だらけになる。

また立ち上がる。黙って見つめる彼氏。



「はい、中へどーぞ。」







***


意地悪ババァのうどん屋



讃岐のあるうどん屋さん。婆さんがご亭主と2人でやっているんだけど、厨房に居るのはご亭主のみ。婆さんは店の前に椅子を置いて何やらお客に指示をしている。


店に来た客は丼を手に取り、セルフで麺を受け取る。ここまでは街によくある「はなまるうどん」なんかと同じなんだけど、ここからが少し違う。


店の隣は広大なネギ畑になっていて、ババァの指示でネギを刈り取り、付属の流し台のまな板にて自分でカットするんだそう。


しかもババァが「あんた早くして」とか「もういい、早く次に譲れ」とか口うるさく指示を出す。


グズりながら食べる子供を慰める家族や、呆然とするカップル。

食べ終わったら隣には流し台があって、自分で使った丼を洗わされる。洗い方が悪いとまた叱られる。


ババァはその間、一度も立ち上がる事がない。




***


六本木にあった華道家のバー


六本木の中心地、あるビルの地下にあったバー。完全会員制。


こちらも時はバブル絶頂期。天井には二億円のエミールガレのシャンデリアが下がり、壁という壁に蘭やバラや百合など、百花繚乱の花が活けてあり、花のむせ返るような香りが店内に充満している。


お店を経営するのは今もご存命の華道家の御仁。やんごとなき方にお花を活けたりなさる傍ら、バーを経営なさっていた。


店のスタッフは紋付袴を来た若い美しい男性達。お客さんは超富裕層に俳優、世界的なデザイナーやアーティスト、銀座でもトップのホステスさんなど。


店主は時に、連れて来られた若い客を試す。

大相撲で優勝したときに使う、タライのような朱塗りの盃に日本酒を一升注ぎ、飲み干せと指示する。






飲み干したら、認めて貰えるんだそう(汗)

人に飲ませるだけではなく、自分でも飲まれる。時に酔った店主は全裸になり、能装束のような透けた衣を一枚羽織って、能面を被り、巨大盃を掲げて音も立てず静かに踊り出す。







カウンターには女優の杉村春子さんやデザイナーのピエールカルダン。


ある時はやんごとなき方面の男性が店を貸切になさり、当時高価なドンペリのヴィンテージを開けられた。この時の器は朱塗りの盃でもバカラのグラスでもない。

紋付袴を来たスタッフの1人が体操選手で、逆立ちをさせて彼の玉袋を引っ張り、そこにドンペリを注いで召し上がったという。


眉目秀麗なスタッフの面接はハワイ旅行。そこで生活を共にして、採用の判断をするらしい(汗)





***

祇園にある某店



こちらもオネエの経営するバー。


いわゆる祇園の花柳界の位置にあり、高額なお会計で有名な某バー。


カウンターに座ったお客さんが会話の中で「誕生日なんですよ」なんて口走ったらそりゃもう大変なことになる。


夜中の2時にもかかわらず、5分くらいしたら巨大な丸いバースデーケーキに、自分の名前入りのプレートが乗っていて、盛大に蝋燭が灯っている。

「お兄さん御目出度うさんどす!これは店からどす!!!」


タダで食べるわけには行かないので、言われるままにシャンパンを開けると、お会計は大変な額に膨れ上がる。


実は馴染みのケーキ屋を毎晩開けさせ、裏の電話で指示して配達させているのだそう。


ここのお会計が高いかどうかは別の価値判断にあるそうです。急にお客さんのリクエストで「明日、歌舞伎見たいんだけど、何とかならんか」みたいなオーダーに答えられ、最前列を並びで確保出来るらしい。


その際にもお金はとらず、再訪した時にシャンパンが開くという仕組み。




世の中には恐ろしいお店がたくさんありますねぇ、、。ウチはそんな事しようなんて想像も出来ないけど。



って、ババァとオカマの店ばっかりじゃん、、、、。





他にも沢山あるのですが、また思い出したら書きます。バーに立ってて面白いのは、トンでもない店の思い出話を聞かせてもらえる事もその1つです(笑)





人のフリみて我がフリ、、




少し前なんですけど、或るおしゃれなレストランにフラッとお邪魔しました。


店内は空いてて「ラッキー!」とばかりに窓側の席に座ろうとした。

誰にも話しかけられずに、窓から景色を眺めながらポーっとするのがたまの贅沢なのです。



そうしたら店内の奥まった席に旧知の仲のオーナーさんがいらっしゃった。普段、店ではたまにしか合わないんだけど、珍しくいらしたのです。


ご挨拶がてら、お隣に失礼する。こんばんは、と彼女に声をかけた僕の声を最後まで聞かずに


「もー、何だか暇なのよ、いつもは忙しいんだけど!最近はあれをこーして、こんな工夫をして、その効果でこんな取材があって、何とかって有名人が来てね、、それでね、、」


この方、割と人懐っこい方ではあるんだけど、ちょっとビックリした。こんなに話したっけかな。


「まあ、横に座りなよ」と、一番恐れていた言葉を掛けられた。あーあ。


やっと一息つかれたようで、「最近はどう?」と僕に聞いてきた。


「あ、僕ですか?まあ変わらず、、そういえばこの間某さん(共通の知人)と道で会ったんですよ!」

と、当たり障りのない話をした。こう言う場合、あんまり踏み込んだ近況報告するのも何だか嫌なので、大抵そうするんだけど。


女性オーナーは自分の話の方が優先らしく、


「ふーん、私はね、この間ある有名なパーティーに行って来たの。日本を動かしてるような人が一堂に会しててね、」


おい、話聞く気全くねーだろ!!




そこからは彼女、1時間話しっぱなし。華麗な人脈、新たに浮かんだアイディア、自分が努力しても中々報われない辺りとをうろうろ。



何かを言おうとすると「違うのよ!」と遮る。もう、その相槌が癖になってるんだと思う。

しまいにゃ共感していて、僕が「分かりますよ、それ!」と相槌を打っても「違うの!」と言う。



(`_´)ゞ


失礼だけど、心の病気か、そうじゃなきゃ少しバカなんじゃないかと思った。これじゃまるで僕はゴミ箱じゃないか。

クソみたいな時間を返して欲しい。


流石にうんざりしたので、急に予定が入ったので出ないと、と伝えた。


そうしたら彼女、「君と話すと楽しいわね。またいっぱい話そうね!」と。


話すって、、、一方的に1人で撒き散らしてただけじゃん。。


昔は素敵な人だったんだけどなぁ。2人で話をする時って、半分は我慢だと思うのです。2人で話すんだから50パーセントずつの配分。

もちろん、盛り上がる時はそんなのどうでも良いんだけどさ。

普段よっぽど理解されてないストレスなのか、これじゃ誰も寄り付かないよな。


僕も同じ傾向があるので気を付けないといけないのだけれど、(お店が静かな日が続くと自信喪失してつい泣き言を言ってしまう)それも今ではグッと飲み込めるようになった。相手から聞かれたら、加熱しないよう慎重に答えるようにしている。


本当に気を付けないといけないのです。




***




少し経って僕の店。同じような傾向の会話をする人がいらした。半円となったカウンターの一体感の中、彼の破壊力は半端なかった。


例えば、みんなで北海道と沖縄、どっちがいいか、みたいなこれまた他愛もない話をしているとする。ある一定の決着に辿り着くその直前に「僕は台湾が好き。だってね、、」と説明を始める。


そんな事が毎回10回位続くので、皆んな呆気にとられる。


流石に僕も、「その話、今関係なくない?」と指摘するとお茶を濁され、、。


そんなこんなで終始、不穏な空気がカウンターを包んでいた。


そんな時間を切り裂くようにゴールデン街でバーを営む、僕の心の師匠が入って来た。





彼女は竹を弾道弾迎撃ミサイルでカチ割ったようなサッパリした性格なのです。





話を遮る彼の隣に迎撃ミサイル、じゃないや、師匠が座られる。こりゃ危ないなぁと思いつつも、何となく静観する。


お二人は前からお知り合いのご様子なのです。



3分くらいして、カウンターの端から師匠の叫ぶ声が聞こえた。

「テメーよ、さっきから人の話の腰ばっか折ってんじゃねーよ!!!」



わわ、もうミサイル発射(笑)



余りにも話を聞かない人には、直球投げる位が丁度いいかもですね。その後その技を盗んでいます(笑)

心の優しい聞き上手な人の時間を奪う事は僕には耐えられません。


先ずは僕がそれをしないように、気を付けないといけないんだけど。




特に難しい話ではないのですよ。少し相手の気持ちになって耳を傾ければいいだけの話なのです。




本日火曜日営業します♪(´ε` )




いやはや、昨日は失礼しました。工事が早く終わるものだとタカをくくっていたのが甘かった。


ローズウッドって木は本当に硬いのです。大工さんもノコギリが切れなくなると手こずっていたし、僕もドリルの刃を二本、折りました。



リベンジで、本日火曜日オープンさせて頂きます!24時まで。


だって、ラジコン買ってもらったら早く走らせたいでしょ?


そんな気分です♪(´ε` )





さてさて。昨日は朝9時まで宿泊待機。車がついたと思いきや、えらい大きなモノが到着。





(大工さんのお一人がうちの伴侶に似ていました、、)


5人でよっこいしょ、とばかりに車から降ろす。しかし重い。





カウンターのサイズより全然大きい、この材木。勿体無いな、、残りはどうするんだろ、なんて思ってたら、「斜めになる文、両端をかなり落とさないといけないので、そんなに余りませんよ」との事。へー、そんなもんかね。





カウンターに乗せてみました。これで、どういう角度で載せるかを決める。3つの要求を簡単に伝える。





お客さんが丸く座って話しやすいのと、僕が作業しやすくまな板が露出してる事と、僕が更に前に出たい。


線を引いて、形を決めます。


そしてここからが大工さんの腕の見せ所。ピアノとぴったり合わせるべく彫り込んでもらう。





何やかんやで夜になり、完成。





ローズウッド、つまり紫檀はブラウンががった紫色を帯びてるんだけど、光の加減とか、細かな傷が沢山あると白く見える。凄く細かく磨くか、ワックスとかニス、和風なら拭き漆なんかで塗装膜をかけてやらないとあの色にならないんだそう。





生の木のままでも良いんだけど、ちょっとカントリーっぽくなるのと赤ワインなんかをこぼすとそのまま跡が残るので、絶対に避けたい。


蜜蝋の入ったイギリスのワックスをかけます。皆さん帰られて、ここから1人。



うすーく伸ばして、拭き込む。最初はテラテラいやらしい色ですの。





乾いたらスコッチで磨き上げ、その後はひたすら木綿の布でゴシゴシ、、






中々気に入っております。ピアノとも色を合わせました。





噛み合うところも丁寧に磨きます。気付けば2時間も、、





前回の仮のカウンターがこちら。





今回、こんな感じになりました。




まあ、有りがちと言われればそれまでなんですけど、緩やかなカーブを描いて、随分横並びの方と話しやすくなりました。後ろのソファだって、僕とだって。




顔、見えるでしょ(笑)





居心地いい空間って難しい。人によって違うもんだけど、僕が思う居心地の良さを再現出来たらそれが一番良いのかな、なんて思います。流行とか最大公約数なんてクソくらえですわ。


人に合わせても結局は受け売りなわけで、自分の思う空間。僕にとっては実家の狭いお茶の間とか、狭くてゴミゴミしているところが好きなのです。



かまくらとか、ずっと居られます(笑)





七輪でメザシ焼いて、塩辛と日本酒、熱々の熱燗でね。炬燵にラジオ、小説。



あと、狭くてボロい屋台のラーメン屋とか、キュンキュンします。

整理された古ボケた引き出しとかあって、中には使い込んだよく切れるハサミとか、絆創膏まであったりして。





ボロくて狭い、そして機能的な様子についキュンキュンしてしまうようです、、。


キャンピングカーのキッチンとか、想像するだけでクラクラします、、。乗った事ないけど。





狭くて機能的なキヌギヌに再会できたような気がして嬉しくなり、つい塗り残した塗装なんかに手を付けてしまう。早く帰ればいいのに、、。





そこから大掃除。店内ホコリだらけなのを拭きまくる。雑巾8枚潰して、もう全て。床まで。


さすがにフラフラしてきたので、チャリで家に帰る。


朦朧としたままコンビニに寄って麦茶のパックを買ったまでは良いんだけど、チャリのカゴから財布を落としてしまい、それを自分の自転車でガリガリ轢いてしまった!!!










盗まれた財布買い換えたばかり。盗まれたチャリも先週に買い換えたばかり。

新しく僕の元に届いた2つがお互いを傷付け合うマリアージュ、、。カインとアベルじゃあるまいし、参ったなぁ、、。



その点、木は良いですよねー。傷も味のうち、また削って塗膜すれば元に戻るし。


そんな方にはラムダッシュの銘木で作る、限定シェーバーをどうぞ!(笑)







カウンター工事の辺りはここで完結となります。長らくお付き合いありがとうございました。

明日からはバリバリ好きに働きます!


明日は24時で閉めます。どうぞよろしくお願い致します。





(補筆)今日は諦めます、、




残りの工程を洗い出したところ、今日中の開店がどうしても無理な事が判明しました、、。



大阪の方、ならびにしゅうくん、アキさん、せいだいくんとそのお友達、ごめんなさい。


水曜から気持ちも新たに頑張ります!連休頑張ったから許してm(__)m






***

22:00からと書きましたが、、凄く申し訳ないのですが、その時間に間に合いそうにありません、、。


22:30頃を見計らって頂けると有り難いです。


大阪から向かっている方がいらっしゃいます。何としてでも開けなければ!



***



カウンター搬入が朝9時。100キロくらいありますよ。





今、これをピアノの形に彫り込んで頂いてます。詳しくはまた後日に、、。



なんせ硬くて重い紫檀の板。加工が思うように行かないとの事です。大体、工事のその夜に営業する方が無茶なんですけど、、、。


今から2時間半くらい工事が続きまして、その後大掃除。なので10時位から、少しですが營業させて頂きます。




店内はこの通り。毎回思いますけど素敵です。お客さんのジュンくん言わんところのサーカス小屋みたいな店だな、こりゃ。







僕はそれまで非常階段にて休息。






充電器と烏龍茶があれば、そこは天国なのです。呼び出されるまではブラームスなんか聴きながら本読んだり、携帯のパズルゲームをしたりしてます。


階下では何やら楽しそうなパーティーの声が聞こえます。何とシュールなんだろうか。


そして明日はお休みを頂きます。宜しくお願い致します。




3連休のシフトなど




ブログのカテゴリーが「報告」ばかりになっています。(汗)


色んなこと書きたいのですが、何なかんやと改装が終わるまで我慢、、。お店に来ることのない方で、ここを読んでくださってる奇特な方にとっては全然つまらないブログかもしれません。

元々、そんなに筆まめなほうでは無いので、忙しい時期が続くとさらに内容が詰まらなくなります。

申し訳ないのですが、皇室とか遊郭とか僕的に好きなE級グルメとか、アホな旅行記とか、そーいうたわいもないなネタは暫しお待ち下さいませ。





この連休最終日の月曜日は工事が入るのですが、なるべく早く終えて8時から営業致します。いつも通り24時クローズ予定となります。

現状復帰が遅れたら、もしかしてオープンが9時くらいになるかもです。必ずこちらにアップします。


そして、翌日の火曜日はお休みとさせて頂きます。連休の定番と誤認識下さいませ。宜しくお願い致します。



そんで、さらに勝手なのですが、翌週16日(定休月曜日)と、翌17日(火曜日)は連休を頂きます。


僕にとって初北海道、小樽と余市に行ってきます。





もうね、年末まで休みが取れないのでウニとかカニとか食いまくって来ます。


ウニなんて、貯金おろして大匙スプーンで掬ってガブガブ食ってやります。




カニなんて、もう殻ごと行きます。というか、普段から殻ごといってるんだけど、更に輪をかけてバリバリ行きます。




いっそのこと、カニになりたい。





前回お伝えした通り、10月は少しだけ、ゆっくり営業させて頂きます。お店の経営って、長い長いマラソンみたいなものかもしれません。月曜日お休みで一年以上走って来ましたが、年末の坂に向かって少しだけスローダウンしたいと思います。





さてさて。
カウンター材、ブラジリアンローズウッドという木が手に入りました。


何と5メートルオーバー(笑)




カーブした右回りの所を使います。カウンターのピアノに沿った曲線。曲がったカウンター材は珍しいらしいです。凄く曲がってます。右曲がり。





水を掛けると本来の色が見えてきます。所謂、紫檀という木です。こんな深い色です。


これを上下と両サイド共に削ってもらいました。







カーブがピアノの曲線に沿う予定です。





どうなることやら、、、。現場にて沢山の調整が待っています。工事の立会いとお掃除後の現状復帰、頑張ります。








10月のシフト




気が付けば、9月のシフトをアップしていないまま、10月になってしまいました、、。

気を取り直して、と。




6(金 床屋営業)ケンジ
7(土)コウジ
8(日 祝前日)タケ
13(金)タケ
14(土)いの
20(金)タケ
21(土)あも
27(金)あも
28(土)いつき



そして、10/2.3と16.17は定休日月曜の後に1日プラスして連休とさせて頂きます。


ちょっとですね、疲れが溜まって抜けなくなってしまいました。9月はお陰様でとても忙しく、加えてなんやかんやありまして、お休みがほとんど取れませんでした。今月は休み休みやらせて頂きます。すみません、、。


思い切って1週間くらい、、と思っていたのですが、そこは貧乏性。連休二回頂ければ多分回復すると思います。




どうか宜しくお願い致します。





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