今年もお世話になりました。




ブログの更新がままならず、申し訳ないです。「遅刻です」とか「休みます」なんて、単なる掲示板になり下がってしまっています。(開店後、その都度消しております)

来年はもう少し込み入ったことを書ける余裕が出てくると思いますので、一部コアなファンの方はお待ち下さいませ、、。



さてさて、2018年。毎年、年末には振り返るようなブログを上げていました。今年もそうします。


お店としての一年は、まあまあ合格点あげられるレベルだったんじゃないかな、と。

移転3年目の今年は改装に始まり改装に終わる一年でした。居心地よく、使いやすいお店を目指してかなりの時間を店と向き合いました。


お正月からソファの底上げや



カウンターの塗り直しなど。




それからソファにドリンク台をつけたり



カウンター用の天井照明とか、カーテンレールを増やしたり、ポン出し音源の再生装置なんかも作りました。スピーカーやPAも入れ替えたし、月やら星も配線し直しました。

メニューに関することも。数年ぶりにナッツを復活。夏からでした。



ロックアイスを丸く形成する機械も買ったなぁ。これのせいで冷凍庫も一台増やしたりして。



「引っ越し先の味のなさに馴染めない」という世にもシンプルな悩みは今も全て解決したわけじゃないけど、少なくともほぼ気にならない所まで持ってこれたのかな、と。とにかく手を動かして愛情を注いで、、しかない気がします。

あんなに違和感あったのに、思い出が増えるたびに上書きされて当たり前ななっていくのは何でも同じなんですよね。携帯の機種変でも、会社の配置換えにしても。

個人的な趣味なんですけど、大義名分としてもっと居心地良い空間を目指して来年も頑張ります!



ベースも買い直して、僕にしては割とちゃんと練習もしてます。これは来年以降も継続してスキルアップしたいと思ってます。








続いて体調面。後半背中の痛みに悩まされましたが、こちらも例年並みといったところでしょうか。スタミナなんかも特に変化なし。
風邪なんかをひいたりサボった回数も例年通りでした(失礼)

とはいえ、オープン当時の29歳の頃の営業時間やノウハウをそのまま続けてるのですけど考えてみたら僕はすっかり43歳。来年度中には定休日や開店時間なども見直したいと思っております。さらにコンパクトになるかもです。



体調に絡んでなのですが、体重を何とかせねばなりません。
汚い写真なんですけど、ごめんなさい。




これね、一年半で20キロくらい太ってしまったんですよ。来年の目標として掲げるべく、晒しておきます。

左の豚みたいな写真。眉も垂れ下がって、ブタにさえ失礼です。

かなり疲れてたのでさらに映りが悪いんだけど、どう見ても月餅みたい。完全にデッサンが狂ってます。この写真が夏場で、今はまた少し増えましたので、どうしようもありません。

だからといって右の写真もヤク中みたいで気味が悪いですけど。

この中間くらいで程よくニコニコ過ごせるように、来年はワークアウトに励みます!


この誓い、来年の目標の8割くらいを占めています。(笑)




今年はちょこちょこ旅行にも行かせてもらえました。

1月 帰省で京都、ついでの名古屋。
3月 倉敷
5月 長野県白馬村
6月 金沢とベトナム
10月 台湾
11月 佐賀県


わー、かなり行ってます。嬉しい。

僕は国内だと二泊出来れば充分なので、来年も行かせていただきたいと思います。




音楽と店の内装いじり、美味しいものを食べて、たまに旅に行く。

このサイクルで、もう少しお休みを計画的に取れたら、あと20年は持ちそうです(笑)



おもちゃ箱をひっくり返したような大人の空間であれるよう、やるべきことはどんどん明確になって来ています。

オッさんになってもまだまだやる気を失うどころか、あれもこれも努力しないと、と思う毎日でありますが、性根がぐーたらな僕の事です、あんまりキチキチ出来ない性分ですが、マイペースに続けていこうと思っております。
来年もどうぞ、お見捨てなくご贔屓によろしくお願い申し上げます。


それでは皆さん、良いお年を!







背中の地雷



もう何十回目か、ギックリ背中になってしまいました。

5年ほど前、毎日狂ったようにジムでウェイトトレーニングをしていた頃、背中の筋肉を傷つけてしまいまして、それから癖になっております。




大体のパターンは決まっています。

*忙しい時期に、トドメとして長時間同じ姿勢を取る

*疲れて長く眠る(12時間くらい)

*朝起きて違和感、まあいいか

*ご飯の用意もしくは歯磨きをすると、、


バキバキッ!!と攣ります。背中から腰にかけて、肋骨の先まで電流が走ったみたいに痛い(笑)

もう、痛いのなんの。胴体が痛いのって日常では中々経験ないじゃないですか、毎度心底ビビります。


ムエタイの選手に安全靴で飛び蹴りされたような痛みと、心臓マッサージみたいな嫌な神経系ショック。10秒くらい息も止まります。なぜか毎度吸えなくなるの。

今回は痛すぎて床に転んでしまいました。キッチンに仰向けに倒れ、天井のパネルをかぞえながらぼんやりやり過ごします。


そして、一番怖いのは二次災害。痛みからすぐにくしゃみが出ると、また見事に攣ります。なので、あらゆる手段をもってくしゃみを押さえ込みます。突然大声で話し出したり歌を歌ったり。


「ハァ〜、ハァ、、いや、最近野菜が安くて ハァ〜 お鍋とか助かりますよねぇ!奥さんっ!」

「ハァハァハァ、、」

「よっしゃ」(小さくガッツポーズ)


側から見たら基地外そのものに見えると思います。

しかも、しゃっくりも同じくらい危険です。こちらはなかなか止められない。







そんなわけで、少々の風邪とかなら出勤するんだけど、ギックリ関連はお休み頂いてます。

グラスを5個くらい持っている時にも二次災害が来て、バリバリ割っちゃったり、と。まあ最悪です。

しかし、このギックリには治療法がないらしいのです。レントゲンにも映らなければ、痛み止め以外の薬もないらしい。

ギックリになってからの対処療法しかないのは困る。僕が目指すのは原因から無くしてしまう根治であるわけで。


調べると、毎日のストレッチがとても良いそうです。うむむ、、、。そんな事するタイプではないので、悩む所なんですけど。


痛みはお薬で引かせたので、今日から出勤です。これは毎回なんだけど騙し騙し行くしかない。

というか、働く事が最大のストレッチになってたりします。気づくと治ってたりがいつものパターンなんです。

が、電球が切れたり重いものを運ぶと、痛い中で再度攣ると、これが厄介。一月くらい傷んだりします。

まあ、様子見ながらラスト29日までノンストップで参りますが、ヤバいな、と思ったらこちらに19:00までにアップします。


19 (水 一人営業
20 (木 一人営業
21(金 あも
22(土 あも
23 (日 あも
24(月 営業します
25(火 一人営業
26 (水 一人営業
27(木 ケンジ
28(金 ケンジ
29(土 いの*年内最終営業日
30(日 お休み
31(月 お休み




どうぞ宜しくお願いします。。。



面倒なお店ですがどうぞ宜しくお願いします。



年末恒例「地獄鍋」





毎年年末になると、お店が忙しいせいか食べる行為自体が面倒くさくなります。

外食ですら、オーダーしたり待つのが億劫になります。


自炊だって面倒。切ったり洗ったり、何もしたくありません。もっと言えば噛むことすら面倒くさい。







そこに現れた救世主!!!





ご存知、鍋の終盤用、シメのラーメンなんですが、これが優れもの。

鹹水が大量に入っておりまして、アンモニアのような風味があります。僕は昔の昭和のラーメンみたいなこの匂いが大好きです。


これを進化(退化?)させたのが地獄ラーメン。具材と水分を足してを繰り返し、麺を煮込んでは翌日に持ち越し、どんどん濃厚に仕上げていきます。10日ほど続けると、ドロッドロのコクが出ます!




まずは昨日の残り汁。鍋の後でも良いんだけど、流石に豆腐やマロニーの屑なんかが入ってると生ゴミ感が強くなるので、網で濾しておきます。見た目はスッキリさせないと長く続かない。


基本となる食材は豚肉とネギなど。ニラや白菜も推奨です。キノコなんかも良いですね。




火を入れてアクを取る。神経質なくらい、しっかり取ります。





盛り付けてこんな感じです。まあ、普通のラーメン。しめじを少し足したりしました。





これはこれで旨いのですが、こんな程度ではダメです。鹹水や豚のコラーゲンがしっかり溶け出さないと地獄にはならない。


食べ終わったら、野菜や肉を足してしっかり火を通します。野菜が溶け、豚のコラーゲンと麺の澱粉質でとろみがつく。

最終的に天下一品のこってりスープ並みに仕上げます。


スープには唾液が入らないようにする。食べ終わったら移し変えてしっかり冷蔵庫で冷やす、などなどの自主ルールを守りながら、どんどん濃度を上げていきます。




ところが大事件!!その夜食べるつもりで鍋ごと冷蔵庫に入れておいたんです。ジップロックではなく。

伴侶にはLINEで「ラーメン鍋だから、食べないでね」って念を押しておいたにも関わらず、、


念を押したにも関わらず、食いやがった!!



せっかく濃厚に仕上がってきたのに、、。念押ししたのに、、。

気持ち悪い食べ方を念入りに説明して、凄く怒ってしまった。



「食べた後で気持ち悪い話しないでよ」と正論を吐いて、部屋に閉じこもる伴侶。フンだ、ざまーみろ。人のスープ取るから後味悪くしてやった。


なんだか虚しいのは気のせいか、、、。


とはいえ、また一からやり直しです。頑張ろう。






伴侶の機嫌を直す為に、初めてのふるさと納税をやってみました。

限度額がよくわからないので、3万円から始めてみた。


知らなかったんだけど、肉から魚から米に商品券、本当に何でもある。


取り敢えずここは伴侶の一番好きな食べ物、漫画みたいな形のステーキ肉と「ながらみ」という雑貝にする。




彼はウニやらアワビ、伊勢海老にはそこまで興味ないようです。カニは普通に好きそうだけど、僕ほど真剣でもない。

特に肉の塊には異常な興味を見せます。アメリカ育ちだからなのか、肉がご馳走と刷り込まれたのか、とにかく凄い。

僕なら、迷わず魚介を選んでしまうのです、、。肉も好きなんだけど、バラエティの面で魚介には負ける気がする。


ともあれ、年末は美味しいものを食べる機会が増えます。

無理やりご馳走を食べなきゃいけない食事会だった、のような話をお客さんから聞くと、何と不幸な話なんだと。

ご馳走は自分のペースで食べたいものですよね。


年末にかけて、食べ過ぎと口内炎にはくれぐれもご注意下さいね。






レジェンドに逢いに




ASKA。


実は僕にとっての長年のレジェンドであります。


お店的にはクラシックだのジャズだのアンティークって設定になってるので、あまり進んでは話したくなかったのです(笑)

知っている人は少ないかもですが。


ピアノとヴァイオリンを習っていた子供時代から、音楽といえばクラシックしか聴かなかったんです。何かあればクラシック。それは僕の若い心の叫びであり、癒しでした。正にロックンロール!!


ところが高校時代、流行っていたチャゲアスの歌が僕の耳に突き刺さりました。

なにかのCM、多分日立マクセルのカセットテープのだったかな。よく耳にする歌手とは違う、妙に引っかかる特徴溢れたヴォーカルが聞こえてきました。


名をチャゲ&飛鳥という。


絡まり合うコード展開に難解な歌詞、そして、ヴォーカルの一人は納豆ととろろとオクラを練り混ぜたような、何とも粘っこい歌い方。

粘っこい中にも物凄いパンチがある。ビブラートもすごい。声量は半端ない上に高音。何だこの充実感は。


世の中の曲をなんでも歌いこなしそうな盤石のテクニックとガラス細工のような詩的な歌詞が織りなす世界は激しく、同時にとても繊細で情緒的でもあった。

僕はすぐに彼の虜になりました。


カセットテープを何度も聞き、コードをピアノで起こしたりしては、彼の作り出す世界にどっぷりハマりました。お小遣いを貯めてCDも買った。ASKAのソロアルバムであるsceneというアルバムは今でも僕の宝物です。

いわゆる、心の拠り所、だったんですね。どのくらい、歌に悩みや喜びを重ねたか分かりません。

僕の心の中心にあったクラシック音楽とは違い、もっと若くダイレクトに心に響きました。

今まで少しバカにしていたポップスが、こんなに気持ちいいなんて!



その後は嫌なことや嬉しいことがある度に、ASKAの作った曲をヘッドホンで聴きながら、自分の存在を確かめていました。友達との諍いがあった夜、失恋や嬉しい時、何気ない穏やかな昼下がりなんか。


きっと誰しもがそうしたように、繰り返し心に刷り込まれて行きました。




学校ではそのことは誰も知らず、あくまで家に帰って一人でハマっていました。


時間は流れ、仕事を始めるようになり、付き合う友達が変わるとクラシックに加えてジャズを聴くようになりました。1930年代のビッグバンドなんか。そのままコピーバンドなんかをやるようになり、ご縁でラテン音楽にハマり出します。

京都では古株のサルサバンドにピアノとフルートで入れて頂き、仕事をしながらライブをこなす日々が始まりました。

もう、ステージに出す曲を攫う毎日。楽しくて、我ながら格好良くって、文字通り青春の日々です。



ASKAの事はすっかり忘れてしまっていました。





だいぶ大人になり、音楽が体の一部になったような生活を送っている時に、ふと部屋のCDを片付けていると、例のASKAので手が止まりました。

わー、懐かしいな。照れ臭いけど、古いけど聴いてみるかと。




君が愛を語れという曲です。



やば、、、タイムカプセル開けちゃった、、。


高校時代のあの匂いとか手触りとか、ざわざわした感じまで全てが瞬間解凍されてしまいました。チーン。


それからは、また暇があると彼の歌を聴くようになりました。

春先にヘッドホンをつけて電車に乗り、窓から桜並木を眺める。懐かしい、忘れかけたナンバーを出鱈目に流してみる。


若い頃にインプットしまくった音楽は、目の前の景色やなんかをより色濃く際立たせてくれる。これ以上ないくらいの充実感が僕を襲います





そんな中で、ASKAは突然覚醒剤で逮捕。活動を自粛してしまいました。今から四年前でした。






まだ彼の生の歌を聞いたことがなかったんです。コンサートは沢山やっていたし、今後も永遠に定期的にやっていると思っていたのに。

あのハマりまくったネバネバ波動砲を生で受けたことないって、後悔しないだろうか。ヘッドホンであんなに気持ちいいのに、ライブだとどんなモンなのか、と。

今ではお金も多少は自由になるし、昨日までASKAは元気で歌っていた。それなのに、今後一切行けなくなるとは。

それどころか、CDも配信も全て引き上げられてしまいました。YouTubeが頼みの綱です。








さらに時間は流れ、今日の日がやってきました。



今回、四年の執行猶予が終わった彼ご全国ツアーを開始したとの事です。ご縁で東京フォーラムのチケットを取っていただけました。Tくん、ありがとう。


すぐ目の前にあのネバネバ波動砲の主が現れる!!


しかも、東京フィルハーモニー管弦楽団とのシンフォニックコンサートだそう。これは行くしかない。


運良くいいお席。こっちまで緊張してきます。





東京フィルハーモニー、たまたまうちのお客さんも舞台に乗ってました(笑)







かくしてコンサートは始まりましたが、、、。

ASKA、全然声が出てなかったんです。そもそもの声量もだけど、高音なんて三回に一回くらいしかヒットしない。それとなく誤魔化してる感じ。


最初は聴いてて「あちゃー、年取ったなー、コンサート見ない方が美しい思い出のままで良かった、、」なんて思ってたんです。そのくらい良くなかった。

横にいた喉の専門家である伴侶は(ヴォーカリストで年に30回くらい色んな耳鼻科に通っている)「キーが狭くなったの以外に、多分風邪引いてるんじゃないか」と教えてくれました。


でも、後半。あれよあれよと声が出てきました。さすがに高音は出ないんだけど、さらに振り絞って歌うんです。もう、なりふり構わず全身を捻って声を絞り出す。

声というよりは、生きようとする執念みたいなのがたまたま歌声だった、って言うくらいにボロボロになって五線譜に食らいついてました。

まるで、足の骨が折れてなおゴールを目指すマラソンランナーのようでした。

気がついたら、僕はビービー泣いていました。僕の伴侶も、周りの人も。




そして、さらに凄いことが!


相変わらず彼が体をよじって歌っているんだけど、凄いノッてくるとですね、どう言う訳かたまーに数秒間、若い頃みたいな歌声に変わるんです。

もうね、全然違う声なんですよ。ボロいラジオのチャンネルが上手く繋がったみたいに、若々しい声が響き渡ります。思わずハッとする。

霧が晴れると、その合間に若いあの頃のASKAが見え隠れする。それにまたビービー泣くわたし。こりゃ、泣くなっていう方が無理です。


これは、ある種の憑依なのかもしれません。年齢や性別を軽々超えちゃうトランスこそが表現芸術の真髄だと思ってますが、歌手っていうのは本当によくわかりません。多分凄いことになってんだろう。


とにかく、僕にとっては神秘的な体験でした。









若い日に聞いた音楽って、電子レンジみたいなものだと思うのですよ。

自分の青春だの恋だのの思い出を沢山の真空パックにして、普段奥底に仕舞ってある。

懐かしい音楽を聴いたら自動で解凍される。僕は若い頃に執着するつもりはないけど、それはとても心地いい経験だと思います。




ASKAさん、これからも頑張ってください。薬の件は執行猶予を過ぎて、法的にも罪を償われました。

誰だって過ちは犯します。今後どう生きるか、今からはそれだけでいいんじゃないかな。


それにあなたにはまだまだやるべきことがある。


こんな本家を食える化け物みたいなパフォーマンスできる人、今の日本にはあなたと玉置浩二しかいない。



聴き始めた当時、僕は15歳でASKAは32歳。28年過ぎた今、あなたは60歳なのに、まだ同じヒット曲を演奏し、こちらも受け取ってる。
また声が戻って来るかもしれない。チャンスがあるならぜひ聞かせて欲しいです。そして、僕のタイムカプセルをまた開いてください。




最近のどうしようもなく乾いた僕の感性を揺さぶったあなたに、ただありがとうと言いたいです。




長文失礼しました。





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